徐々に悔しさが込み上げてくる
俺達は、朝飯時の活気がある宿屋に戻った。
獣人の仲居さんが、愛想良く挨拶をしてくる。
「シズさん、コイツがリーダーの虎人だってさ」
「後は任せて! みんなで朝食を食べてきたら?」
シズさんの闇の部分は見たくない。俺達は宿屋の朝食会場へ向かった。
◆◆◆
「先生、どうしました?」
隣に座っているゾッドが心配そうに聞いてきた。
「いや、【閃光の勇者】を逃しちゃってさ」
「えっ? 戦ったのですか?」
「多少の傷は負わせたが、逃げられたよ⋯⋯ 」
「俺も自分の技が全く通じませんでした」
ユウが珍しく神妙な顔をしている。
一気に場の雰囲気が重くなってしまった。
「大丈夫よ、私が勇者の動きを止めれば楽勝なんだから!」
シノンが雰囲気を変えるように、明るく言い放った。
現状ではシノンが【閃光の勇者】の動きを止めるか遅くして、俺が捕まえるという作戦なのだが、果たして上手くいくのか?考えれば考えるほど心配になる。
「ちょっと風呂行ってくるわ」
俺は気分を変えるために風呂へ向かった。
この宿屋は各部屋に露天風呂がついている豪華な造りだ。
風呂に入って【閃光の勇者】との戦いを、鮮明に思い出す。
なぜ倒せなかったのか?徐々に悔しさが込み上げてくる。まだまだ実力不足ということか。
「ご主人様、私も入りますね」
「エルダも風呂入るぞ!」
マユミとエルダが、思い詰めた俺を、心配して来てくれたようだ。




