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野生の命を堪能しましたよ
「お〜〜い! そろそろ帰るぞ」
俺は獣人の死体で、足の踏み場が無い一階に降りた。
「野生の命を堪能しましたよ⋯⋯ 」
獣人の命を経験値に変えたユウが、満足そうに呟いた。
二階から見ていたが、ユウの強さは圧巻だった。
四方八方から獣人が押し寄せて来ても、圧倒的なスピードと縦横無尽な槍捌きで、危機的な状況になる事は一度も無かった。
パワー、スピード、テクニックが、常識を超えたレベルで纏まっている。
対して、エルダは恵まれた身体能力のみで戦っていた。元コロッセオのチャンピオンだが、技術的にはまだまだ未熟のようだ。
逆に言えば、技術を身につければ爆発的に強くなる。これからの成長が楽しみだ。
「派手にやったな! お前ら生きてるか?」
セイノスが酒場に入ってきた。
「セイノス、無事だったか!」
「逃げようとした獣人は丸焦げにしといたぜ!」
シノンは大丈夫だろうか?
急いで裏口に向かう。
「あら、もう終わったの?」
声はするが辺りを見渡しても、シノンの姿はない。
「じゃ、早く帰りましょう」
見上げると、シノンが朝焼けの空に浮いていた。




