62/78
トイレに行きたい
まだ深い闇に包まれた早朝。
【仙人】の俺、【槍王】ユウ、【龍人】エルダ、【邪道師】シノン、【魔人】セイノスの五人は、気配を隠して反乱分子達のアジトへ疾走していた。
反乱分子に潜入している、タカーマハラ王国のスパイから、虎人のリーダーが酒場にいるという情報を得たからだ。
「エルダ、大丈夫か?」
硬い表情から緊張しているのが分かる。
マジックアイテムである【精霊王の守護石】と【怪力の指輪】を渡してあるから、死ぬ確率は限りなく低い。
「仙人様、五十人対五人の勝負ですからね、エルダさんもナーバスになりますよ」
戦闘狂のユウが、爽やかにフォローする。
コイツは戦いの前が一番機嫌がいい。
「おい仙人、エルダはトイレに行きたいぞ!」
――そっちか!!
「ちょっとみんな――! トイレだ! トイレに寄って行こう!!」
早朝からトイレを探す羽目になったが、おかげで殺伐とした空気が少し和らいだ。




