地味なKOですいません
クリードの力強い猛攻を捌きながら、俺の実力を見せつける方法を考えていた。
後ろ回し蹴りのような大技で倒すか、或いはグラウンドに誘い込んで、柔術の三角絞めで締め落とすか――
とにかく派手で、印象に残るKO劇を見せたい。
考えながらクリードの右ストレートを避けて、ガラ空きのボディーに、ジャブのような軽いパンチを入れる。
「ドンッ!」
重い爆発音が響いて、糸が切れたようにクリードは崩れ落ち、うずくまってしまった。
「あっ!」
この【異世界】の気の恩恵で、俺の身体が大幅に強化されているのを忘れていた。
クソッ!
全く!地味なKO劇だ。クリードが再度立ってくれることと祈ったが、どうやら無理のようだ。
シズさんは納得してくれたのだろうか?
少しの沈黙の後、
「失礼いたしました」
シズさんが頭を下げた。
「仙人にふさわしい絶技を拝見しました」
いやいや、ただのボディーブローなんだけどね――
◆◆◆
この日から、【魔術師】【占星術師】【預言者】といった【聖職者】といわれる人達が、家に来て講義をするようになった。
この【異世界】は魔力というフリーエネルギーを基にして成り立っている、とか、
亜人やモンスターの種類や特徴とか、
仙人の役割などなど⋯⋯
内閣特務室第三室長の山根から、ある程度は話を聞いていたが、驚くよね。
信じられない話の連続だった。
二週間みっちり講義を受けた。