ダンジョンで戦おう
獣王国に入ってから、二時間程経っただろうか。
皆であれこれ喋っている間に、ダンジョンを囲う【境界壁】に到着した。
【境界壁】の手前には屋台や露店が密集して賑わっている。
ダンジョンに近づくにつれて完全武装をした獣人や人間が、慌ただしく行き交っているのが見えた。
「よし、行こうっ!」
【仙人】の俺、【槍王】のユウ、【龍人】エルダ、【森羅万象を司る英雄】ゾッドの四人でダンジョンに挑戦することになった。
シズさん、マユミ、シノンは食べ歩きがしたいらしい。
トラブルに巻き込まれない事を祈る。
俺達四人は、壁に穴が空いただけの質素な入り口に並ぶ。
「かなり人気があるダンジョンなんだな」
俺達の前には、五十人ぐらいの獣人や人間が列に並んでいる。
「並んでいるのは、このダンジョンで生計を立てている冒険者達ですね」
混んでる割には意外と待ち時間無く、ダンジョンに入ることができた。
◆◆◆
ダンジョンに入ると、外と変わらず広々とした草原だった。
ダンジョンにも種類があって、このダンジョンは【自然型】といわれるタイプで、凝った仕掛けはなく、ただモンスターを倒しながら進むだけのシンプルな構造らしい。
「そろそろモンスターが来ますよ! 準備してください!」
と言ってユウが槍を構えた。
水平線の向こうから、砂煙をあげて、何かが近づいてくる。まるで地震の前触れのような地鳴りが響いている。
「何だあれ?」
「ダンジョンの影響で強化された動物達でしょうね」
ユウが楽しそうに答えた。
「みんな無理しないようにな。ゾッドは見学が目的だから、無理せず逃げるように」
牛や馬、猪などの大群が目視できるようになり、周りの冒険者達が雄叫びを上げている。
「うおおおおおッ!」
「今日も稼ぐぞおおお――!
ユウもつられて叫ぶ。
「おらァァァ――!」
もう動物の大群は目と鼻の先だ。
「来るぞ――!!」
金属と骨がぶつかる音がした。
冒険者達の怒号と悲鳴が入り混じる。
牛に跳ねられて宙を舞うヤツもいる。
俺達も動物達を迎え撃った。
水牛の眉間を穿ち、馬の首を切り落とす。
「さあ、ドンドン奥に進みましょう!」
ユウが当たり前のように先導して歩き始めた。




