軍隊格闘術
木製の古びた玄関ドアを開けると、キャリアウーマン然としたシズさんと、軍服をきた身長二メートル前後の日焼けした筋骨隆々の男が立っていた。
佇まいからして何かしらの格闘技を修めているのは明らかだ。
シズさんの説明によると、筋骨隆々の男はタカーマハラ王国軍の格闘術教官でクリードという名前らしい。
「今現在の仙人様の強さを測らせていただきたいのですが⋯⋯ 」
口調は丁寧だが問答無用でクリードとの対戦要求をしてきた。
「分かった」
俺は短く答えた。俺の実力を示す良い機会だ。
真夏のような強い陽射しの中、雑草がところどころ生えているだけの庭で、巨人クリードと向き合う。身長百八十センチの俺が見上げてしまう。
カーキ色のタンクトップから覗くクリードの胸筋の厚さと腕の太さが更に威圧感を増している。
対する俺は、余分な筋肉はつけていない。頼りなく見えるだろうな⋯⋯
お互いが怪我をしないように、最低限の配慮としてグローブのようなものを両手にはめた。
クリードが両手で顎をガードするボクシングスタイルの構えをしている。やる気満々らしい。
――力の差を存分に見せつけてやる。
「始めっ!」
シズさんの合図と同時にクリードの猛攻が始まった。
左の前蹴りで距離を詰め、右のロングフック、左ストレート、右の回し蹴りから左のショートフックと流れるようなコンビネーションで攻めて来た。スピードもある、パワーもある、一流のキックボクサーのような動きだ。
俺は両手をだらりと下げたまま歩法と体捌きで全て躱す。
「当たらんよ」
クリードを挑発するように言った。
顔を真っ赤にしたクリードが更に苛烈に攻めてきた――