怒りのエルダ
屋敷に戻ると、また日常が始まる。
昼間は武術の稽古、夜は【霊獣】マユミとシズさん、俺で爛れた夜を楽しむ、という穏やかな日が三日過ぎた。
ドンドン!ドンドン!!
「開けろ! バカにしやがって!!」
屋敷の扉を猛烈に叩いて騒ぐ輩がいる。
――忘れてた!
扉を開けると、軽装鎧を装着した【龍人】エルダが烈火の如く怒っている。
手にした剣の切っ先を俺の首に当て、
「今殺してもいいんだぞ?」
と、物騒な物言いをする。
「待て待て! こっちにも事情があったんだよ」
「言い訳を聞くつもりは無い!」
「分かった、分かった! 今から戦うか?」
「そのつもりだ!」
「じゃ、戦い方は俺に決めさせてもらう」
どんな戦いが良いか⋯⋯
【龍人】エルダは、俺好みの美女だから傷つけたくないしな⋯⋯
「早くしろ!」
【龍人】エルダは爆発寸前のようだ。
「相撲にしよう」
「スモウ?」
「俺の故郷に伝わる、神に戦いを捧げる格闘技だ」
「神に⋯⋯ 」
この【異世界】では神は実在する。エルダが怖気付くのも無理もない。
とはいえ、相撲は【異世界】の神とは関係ない。
――大嘘である。
「龍人はパワーがあるらしいな?」
「私達は人間より遥かに強いのさ。生粋の戦闘種族だからな」
「その力くらべをしようじゃないか」
怪訝そうな表情のエルダと俺は陽光が降り注ぐ庭へ出た。




