屋敷へ帰ろう
まだ息がある【悪徳王】を担いで、ユウの元へ走る。
(生きていろよ⋯⋯ )
ユウが居た場所に到着すると、むせるような血の匂いがする。
周囲を見ると、獣人達の血まみれの死体と、どろりとした血溜まり中に、恍惚とした表情で立っているユウがいた。
「新しい職業が得られたようです」
ユウが滴る血を拭いながら、笑顔で喋った。
純白の鎧が血で赤く染まっている。それは獣人達の血か、それともユウの血か⋯⋯
「今なら仙人様に勝てそうです」
槍を中段に構えて微笑む。
「やめろ、やめろ! 早くゾッドに悪徳王を渡さないと!!」
「そうですか⋯⋯ 」
「そういうところだぞ! お前が勇者に成れないのは」
苦笑いするユウを促してゾッドの元へ走る。
◆◆◆
従軍記者達に囲まれて饒舌に喋る【森羅万象を司る英雄】ゾッド。
事前に【悪徳王】を引き渡し、喋る内容も十分にレクチャーしておいた。
俺とユウが挙げた戦果を自分の物として、存分に語っていることだろう。
俺の仕事は終わった。
【霊獣】マユミに、本来の姿であるペガサスに変身してもらい、空路で屋敷に帰った。
あれ?何か忘れている気がするな――




