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狂戦士
「アアアアアアアアアアアアッ」
【悪徳王】が狂気に染まった声で吠える。
全身の毛穴から緑色の液体が流れ、巨大な筋肉の瘤が次々と隆起する。
知性が宿っていた瞳は、人ならざる者へと狂っていった。
「ボロシヘハルッ」
意味不明な事を叫びながら【悪徳王】は跳躍する。
驚異的な加速力と相まって、ド迫力の筋肉の砲弾と化した。
俺がギリギリで避けると、まるで地面が爆発したように土砂が舞う。
桁外れの単純な暴力。
幼な子のような純粋な攻撃。
(ユウだったら負けてるな)
俺で良かった、とつくづく思う。
強敵を引き寄せる強運。存分に力を発揮できる幸運。
【異世界】に来て本当に良かった。
俺は闘いの快楽に取り憑かれているのだ――




