人間やめました
瞬く間に【悪徳王】に追いついて、槍の柄で足を掬い上げた。
「ひぃ――アブッ」
【悪徳王】は顔から地面に突っ込み、派手に転んだ。
「俺からは逃げられねえよ」
汗と鼻血まみれになった顔は、怒りと恐怖が入り混じっていた。
「助けてくれ!金ならいくらでもやる」
「小悪党が言いそうなセリフだな、お前ホントに悪徳王か?」
【悪徳王】の顎を、アッパーカットのように槍の柄で下から突き上げる。
「ぐぅっっ⋯⋯ 」
【悪徳王】は痛みで痙攣する手で顎を押さえた。
「口が閉じねえか?アゴの骨が折れたな」
腰が抜けた【悪徳王】は腕だけで後ずさりしている。
「殺しはしねえよ、半殺しにするだけだ」
「な、なな、何者だお前ッ」
【悪徳王】は悲鳴そのままの声を上げた。
「俺か?俺は仙人だよ」
言いながら彼我の距離を詰める。
「ひぃぃぃ、殺してやる、殺してやる!」
【悪徳王】は緑色の液体が入った注射器を首の動脈付近に刺した。
一本、二本、三本、四本、五本⋯⋯
こいつ人間やめる気だな――
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