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追跡を開始しよう
【悪徳王】を視認した【槍聖】カツラギ・ユウの、剣呑な眼光から察するに、深い因縁の歴史があるのだろう。
めんどくさいから聞くのはやめておく。
「絶好のチャンスです!【悪徳王】を殺しに行きましょう」」
「落ち着け! 俺はゾッドに手柄を上げさせる為に、討伐軍に参加している」
「私もです」
「なら雑魚は始末するにしても【悪徳王】は半殺しぐらいでゾッドに渡したい」
「分かりました」
「周りの獣人は強いのか?」
「存在進化を繰り返した奴らですから、かなり強いです」
「お前でも無理か?」
「あの人数は無理です」
ざっと数えると、獣人が三十人ぐらいいるようだ。
「俺とお前で雑魚は殺す」
「はい」
「【悪徳王】は俺に任せろ」
朝露に濡れ、むせ返るような樹皮の匂いを嗅ぎながら、老獪な猟師のように気配を消して追跡した。




