不吉な予感がします
今日は【悪徳王】討伐遠征の出立日。
生憎の曇天で、朝日は拝む事はできない。
⋯⋯ 微妙なスタートである。
俺は【森羅万象を司る英雄】ゾッドと豪奢な馬車に乗っている。
「先生、王都を出るまでは、国民に手を振り続けてください」
またパレードか⋯⋯
「【英雄】と【仙人】という王国の最大戦力を皆が見たいのです」
――分かった、分かった。
俺達が乗る馬車の後ろには、恐らく魔力が動力源の超大型バスのような乗物が、五台連なっている。
「ゾッド、今回の討伐軍は何人編成なんだ?」
「【悪徳王】討伐軍の顔ぶれは、私達と武俠兄妹、王国の聖騎士や重戦士などの精鋭百五十人と、高位の魔術士が五十人です」
「それだけいれば、俺達はやる事ないだろ?」
「いえ、油断はできません」
なんとなく【悪徳王】のヤバさが分かった気がする。
俺は【霊獣】マユミと、過去にコロッセオで対戦要求してきた、龍人エルダを連れてきている。
龍人エルダは昨日、屋敷まで来て対戦要求してきた。
明日から遠征だから、忙しくて無理だ、と断ったら、遠征中でもいいから戦え!と、食い下がってきた。
しょうがなく連れてきた、という感じだ。
【悪徳王】討伐戦では、しっかり働いてもらおう――




