英雄が弟子になりました
俺は塾考の末【英雄】を弟子として受け入れる事にした。
ゾッドの臆病な性格は、格闘家として大成するためには必須の才能である。
俺が現役の頃に交流があったMMAのチャンピオン達は臆病な奴が殆どだった。
臆病だから誰よりも練習し、誰よりも勝利のために考える。
ゾッドのような人間を何人も見てきたから思う。コイツは強くなる、と。
あとは、打算的だが、権力を味方にしておきたい、という考えもある。
堕神討伐までの一年間、何かと融通が利くようにしておきたい。
そして、何よりも、国民のために生きたいというゾッドの気持ちが本物だったからだ。
「師弟関係は分かるよね? 二人の時は先生と呼ぶように」
「はい! 先生!」
素直な奴は伸びる。
国民には【英雄】が弟子入りした事は秘密にしたほうが良いだろう。国民の精神的支柱である【英雄】の威光が薄くならないように気を使った方がいい。
「今日はもう遅いからさ、明日から稽古しようか」
ゾッドは希望に満ちた顔で、意気揚々と帰っていった。
◆◆◆
シズさんと【霊獣】を呼びに二階へ上がる。
ゾッドとの話が長引いて随分と待たせてしまった。
「⋯⋯ やめ、て⋯⋯ 」
微かに小刻みに震える声がした。
声がする方向を見ると、薄明かりに照らされた廊下で【霊獣】と重なり合っているシズさんがいた。
【霊獣】に服を脱がされ、慎ましい胸が露わになっている。
いつものキャリアウーマン然とした凛々しさは既に無く、犬のように舌を出して【霊獣】の愛撫で感じていた。
俺は全てを受け入れた――
せっかくなので、三人で爛れた夜を楽しむことにした。




