虚構の行く末
引くほど号泣している【英雄】をなだめて話を聞いた。
「弱いのに何故【英雄】になれたの?」
「ウゥッ⋯⋯ 、父が軍の最高幹部【元帥】なので、なんでもできるんです」
ゾッドの家は代々武門の誉れ高い名家として続き、軍の要職を担ってきたそうだ。
「でも、国民を騙すのは良くないよね?」
「はい⋯⋯ 、国民に安心して欲しかっただけなんです⋯⋯ 」
ゾッドが偽英雄になる前、老齢の英雄と勇者が体力の限界で引退したそうだ。
魔王国や獣王国に対する抑止力が【雷鳴の勇者】と【閃光の勇者】の二人だけになり、国民の間に不安が広がった。
そこで、ゾッドの父親があの手この手を使い、息子を【英雄】に祭り上げた。
武門の誉れ高いシェルドルン家は、先祖代々【英雄】を輩出するのが悲願であったからだ。
いずれ、ゾッドを【英雄】に相応しい実力を身に付けさせるつもりでいたが、ゾッドの生来の気の弱さが災いし、一向に強くならず、現在に至っている。
「私は地位が欲しかったんじゃない⋯⋯ 」
ゾッドは次第に泣き止み、真正面から俺を見つめて話をしている。
「シェルドルン家の人間として、国民のためになりたかった――」
話をしているとゾッドの心根の良さが伝わってくる。
「大変だったな、俺は責めないよ⋯⋯ 」
偽英雄になったのは王国の事情があったということか。
だがしかし、その体はどういうことだ?
「でも、その筋肉は何?」
「せめて強く見えるように、筋トレを頑張りました」
頑張ったっていうレベルの体じゃない。
ある種の狂気がなければ作れない体だ。
狂気がある奴は強くなる。
「俺の見立てだと、君は強くなると思う」
【英雄】の雰囲気が変わった。何か思い詰めたような顔をしている。
「仙人殿!私を弟子にしてくれませんか!」




