龍人エルダ登場
武俠兄妹を倒し、いよいよ英雄戦だ、と気を引き締めていたが【森羅万象を司る英雄】は、姿も見せずに帰ってしまったようだ。
『武俠兄妹との死闘の疲れが抜けていない【仙人】と闘うのは、王国の最大戦力【英雄】のあるべき姿ではない。また日を改めて、存分に闘おう』
というメッセージを、司会役が読み上げた。
それが本心なのかが、気になる。
今日の俺の闘いを見て、何か良からぬ策を講じてくるかもな⋯⋯
まぁ、純粋な武技の勝負なら、負ける気はしない。
もちろん、森羅万象を操られたら、勝てる気はしないが。
闘技場から退場しようと入場門に向かうと、軽装鎧を身に付けた、身長百八十センチぐらいの女の龍人が立っていた。
初めて見た亜人に少し驚いた。
しかし、筋肉質だが、うっすらと女性らしい脂肪を纏った体は、野生的な色気を発している。
まるで西瓜のような豊満すぎる胸と、締まったウエスト、スラっと伸びた美しい足。
頭に生えている二本の龍角と腰から伸びた尻尾を除けば、金髪碧眼と相まって、海外モデルのような美しさだ。
「このコロッセオのチャンピオンです」
シズさんが囁く。
「おい、仙人! 今すぐ私と闘え!」
龍人が大声で叫ぶ。
しばらく龍人との睨み合いが続いたが、大人しく帰っていった。
気が強い女は嫌いではない。いや、むしろ好きだ。
シズさんは王女だから、手を出すとめんどくさいからな――
広い仙人屋敷で、一人暮らしは寂しいから、現地妻的な存在が欲しいな⋯⋯




