静かなる決着
『何ということだァ! 武俠兄妹の攻撃はことごとく避けられ、カスリもしません』
興奮した司会役の声が、コロッセオに響くと観客の歓声は、どんどん盛り上がっていく。
【剣聖】と【槍聖】の二人は、王国に飛来した火龍を撃退したり、【悪徳王】といわれる犯罪者集団のボスを追い詰めるなど、その実力は『勇者クラス』であると称えられている。
そんな二人が【仙人】から大きく距離をとって動けないでいる。
その【仙人】の姿が一瞬霞む。
二十メートルを超える距離を、たったの数歩と刹那の間に詰められ【剣聖】の目前に迫る。
【仙人】の音を置き去りにする程の剣技は、確実に【剣聖】を追い詰めた。
妹を救うべく【槍聖】が裂帛の気合いと共に繰り出した高速突きを【仙人】は瞬時に木刀を捨て、左手で掴んだ。
驚愕の表情を浮かべた【槍聖】の頭部に【仙人】の右廻し蹴りが入った。
巨木が倒れるようにして【槍聖】は意識を失った――
最後まで、棒を手から離さなかったのは、武人のプライドなのだろうか。
【槍聖】に駆け寄る【剣聖】の首筋に【仙人】の木刀があてがわれる。
「試合終了だ」
【仙人】の底が見えない超常的な強さに、観客は静まり返っていた。




