武俠兄妹
タカーマハラ王国では“武俠兄妹”として知られる、兄の【槍聖】カツラギ・ユウと、妹の【剣聖】カツラギ・スミは、【森羅万象を司る英雄】の右腕であり、行動を共にする陰の実力者である。
双子という特性を活かした完璧な意思疎通から繰り出される連携攻撃は【勇者】すら脅かす迫力がある。
その二人が、親善試合とはいえ、伝説を倒すために【仙人】の前に立つ。
「妹よ、絶対に負ける事は許されない」
「分かっているわ、兄様。国民を失望させるわけにはいかないわ」
短い言葉を交わした後、【剣聖】カツラギ・スミが木刀を持って腰を低く構え、その後ろに【槍聖】カツラギ・ユウが身の丈はある棒を持って構える。
強敵と戦う時にとる必殺の布陣である。
対する【仙人】は両手に木刀を持ちながら、構えずにゆったりと立っていた。
審判役の合図と同時に【剣聖】カツラギ・スミが、陸上のスタートダッシュのように低い体勢のまま、目視不可の速度で【仙人】の足を木刀で払う。
と、同時に【槍聖】カツラギ・ユウが、【剣聖】である妹を飛び越えるように跳躍し、頭上から【仙人】に棒による連続突きで攻める。
この一連の攻撃を【仙人】は二本の木刀で柔らかく受け流していた。
「――チッ!」
【剣聖】カツラギ・スミが舌打ちしながら逆袈裟斬りで追撃した。
【槍聖】カツラギ・ユウは、気合いの雄叫びをあげながら、棒が歪んで見えるほどの高速連続突きで更に追い込むが、それらも全て防がれて動きを止める。
【仙人】の柳のような防御から一転、攻勢に出ようと爪先重心になるのを見極めると、【剣聖】と【槍聖】は同時に【仙人】から大きく距離をとった。
息を呑んで見守っていた観客から、地鳴りのような大歓声が沸き起こった――




