槍聖と剣聖
『皆さまお待たせしましたァ。いよいよ仙人の登場です』
熱気と興奮が渦巻くコロッセオに司会役の声が響く。
(総合格闘技の大会に出ていた時を思い出すな)
二万人を優に超える観客が拳を振り上げ、心のままに叫んでいる。
「青龍門からは、伝説の住人【仙人】の入場です」
審判役に促されて闘技場の中央に歩を進める。
俺を見て観客の盛り上がりが、更に凄い事になっている。
「続きまして白虎門からは、人類最強、王国の最高傑作【森羅万象を司る英雄】の入場です」
白虎門からは、顔がそっくりな男と女が入場してきた。双子だろうか。二人とも艶のある黒髪を後ろで纏めている。
黒いTシャツと動き易そうな黒いジャージ素材のズボンを履いている。二人とも身長は170センチくらいか。痩せているが、鍛えているのは分かる。
「我らが【森羅万象を司る英雄】と戦う前にィ、【仙人】は伝説の中だけの住人か、英雄と戦う資格があるのか、知りたくはありませんかァ」
おどけた口調の司会役の問いに、観客が声援で応える。
(お前らは何も考えずに反応してるだろ)
シズさんが走ってくるのが見えた。審判役にクレームを入れている。
審判役も王女に詰めよられて困っているようだ。
「シズさん、やらなきゃ収まらないよ!」
メインイベントは盛り上げなきゃいけない。
俺は強化系のマジックアイテムでチート状態だ。問題ないだろう。
「あの二人は【剣聖】【槍聖】職を持つ歴戦の強者よ」
シズさんの言葉を受けて、二人を見ると、見覚えのある指輪や腕輪をしている。
(お前らもマジックアイテム着けているのか――)




