魔人達は姿を消した。
オオアザ国本殿
「奴ら一体何処へ?」
オオアザ国皇帝 光圀は首を捻る。
あの後魔人達の死体を含めた集団が消えました。
「だが何より我が友を失った」
「我れらが英雄が…」
秘書官の頬を涙が伝う。
この戦いに於いてたった1人の戦死者それが尖閣であった。
時を同じくして
「わかりましたよこの魔人の秘密が」
魔人達の生態の解明に一筋の光明が見えた。
エルエルが報告する。
「特にこの資料が役立ちました。魔人達が王と崇めるこのスペンビーが元となった個体の誕生の経緯が
元々帝国は秘密裏に人体をより高位の段階へと押し上げる研究が今の皇帝より数代前から行われていたようです」
「あの国は本当に救えねえな自分達がこの世界の王と勘違いしてやがるアンクルサムかよ」
鉄斎が毒づく
「「「アンクル?サム?」」」
まったく聞き覚えのない単語に一同困惑する。
「あぁ失礼続けて下さい。」
鉄斎は続きを促した。
「帝国は元より魔術士となれない者の違いを研究していたそうです。
魔術士になる者は大気中の魔素を吸引し、魔素を含んだ動物や植物を経口摂取する事で変異した内臓が魔術を使ってるタンクの役割になっていると断定しました。
更にこの変異した内臓機能…彼らは魔力生成臓器と呼んでいましたが、この魔力生成臓器が遺伝する事もわかりました。と言っても100パーセントって訳ではないですが、通常の内臓から魔力生成臓器に変異する道半ばの臓器でも胎児の状態で母体の摂取する食糧によっては魔力を保有していない親からでも魔力を持つ子供が生まれるそうです。
世代が移り変わっていく中で人間の魔力保有者が少しずつ増えていきました。
魔術式が発見され今日まで人間は生き延びてきました。」
「ただこの進化を人体の魔素の受容量の増大という観点から見た帝国は人体により生成量の多い魔獣から魔力生成臓器を移植する実験を行いました。」
鉄斎は顎に手を当てなるほどと思った
(オオアザに侵攻してきた帝国の軍人が魔獣から回収しようとしていたのはこれかぁ)
「それでもこの実験は全部で15例程行われましたが成功者は1人。
ポール将軍です。
そしてこの世界にいくつか、出てる魔素の噴出孔を探しそこにあった魔鉱石を動物実験として耐久力の高いスペンビーに帝国初めての無属性の特殊な魔術式と一緒に組み込みました。
だが強烈な負荷に耐えられず死亡した筈ですが実はその個体は孕んでいたそうですその腹の子こそが…」
「奴らの崇める王というわけだ。」
エルフ王が不快気に答える。
「その通りです。そしてその王が帝国の首都を襲いました。」
「これは帝国が蒔いた種ですか」
流閣が呟く、
「とは言っても政府であろうまぁこの高すぎるツケは世界に支払って貰うが」
とエルフ王が告げた後に立ち上がり
「だが我が愛すべき若き命が奴らに消された。ファダール家よりもたらされた提案受け入れる」
エルフ王はそのまま立ち上がり剣を抜く
「そしてこのまま行けば人類対魔人の生存競争になる奴らを滅ぼし、人間の未来を勝ち取る!!」
同席していたエルフの軍幹部達が敬礼をし
「ハッ」
各国の首脳会談を開く。算段が組まれていった。
……2日後
「そろそろローディアンともおさらばですか〜残念です。」
ニーカが残念そうに喋る。
「ん?」
鉄斎が首を傾げる
「だってエルフって美男ばっかりだったじゃないですか〜」
「この女」
呆れながら鉄斎は荷物をまとめる
「ファダール家はここに移住して魔導塔の阻害魔法の研究を始めるそうですね」
ニーカが準備がてら鉄斎に報告する。
「俺たちは一旦オオアザに帰ってこの事案を陛下に報告しないと」
鉄斎も荷作りを終えて荷台に積む。
「オオアザの方ここにおられましたか!!」
エルフの青年が肩で息をしながら紙切れを渡す。
「これは?」
鉄斎が訝しみながら貰った電報を開く。
「おつかれ様です。」
ニーカがエルフの青年を労う。
「ニーカ流閣を呼んでくれ」
「はい、それにしても何かあったんですか?」
「尖閣さんが戦死した。」
「え―」
オオアザの誇る戦士が死んだ。




