魔人と国樹
その日ローディアンに魔人が来た。
数は3匹、連携と隠密に優れたタイプだった。
この魔人の素体は虫の下級魔獣ウォー・アント。
そして修練場を出た少年と間の悪いことに会ってしまった。
魔人達は容赦なく少年を襲う「明日は修練場は休みだぞ」と伝える為に少年を追ったキーマがそれを目にした。
キーマの目に飛び込んだのは虫人間が少年を襲うその瞬間だった。
それを認識したキーマは即座に両手足裏の爆発魔法を使用し魔人達の注意を晒すつもりで音を出し空気の足場から風魔法で加速、速かったがそれでも間に合わなかった。
「おおおおおおおお!!!フウウゥゴおおおおおォオオオ!」
門を隔てても聞こえる絶叫慌てて一同が門を出るとそこには、
魔人達が距離をとりキーマはフーゴを抱えながら対峙していた
同僚のエルフが
「キーマ、一体何が」
「「「「フーゴ!!」」」」
「おいっ早く医者を!!」
「医療器具を取ってくる」
即座にエルフ数人が動く
「急場凌ぎに過ぎんが!」
鉄斎は気功医療を発動させ治療にあたる
(内部の損傷が激しい!このままでは!)
「死にたくない、死にたく」
「喋るな…傷口が開く」
冷静に鉄斎が言い放つ。
「キーマ…兄…ちゃん俺…強くなれる…よなぁ?」
「あぁ強くなるぞ!大きくなったら俺の技習うんだろ?」
「うん…約束…だよ?……どんどん…音が聞こえなく…なっ…て」
「俺はここにいるぞ!」
「でも…兄ちゃんの…手ぇ…あった…かいや」
鉄斎は目を瞑り静かに気功医療を解いた。
キーマはフーゴの手を解いて手を重ねさせた。
「フーゴはよぉ魔力総量が少なくてなぁそれでも近接戦闘なら強くなれるって夢見ててよ俺なんかのことをキラキラした目で真っ直ぐ見つめてくれるんだ…武に憧れるほんの10歳の子供だったんだ……ほんの10歳の子供だったんだ!!!」
「キーマ!!」
エルフ青年達が合図を待つ。
「オオアザァアアア!!
アンタ達は手を出すなぁぁあああ!!
俺が殺る!
フーゴが憧れたエルフの俺が殺らなきゃあならねぇんだよぉおお!!!」
そしてローディアンを襲ったこの3匹の魔人は王の直系にあたる。
王の直系とは王より知恵の石(王の母親が埋め込まれた魔鉱石と同じ物を帝国から奪った物)を埋め込まれた自我なしの魔人。
「ギーラ」
「ギギギギギギーラ」
「ギラギラギギギギギ」
この3匹は言語を持たない知恵の石の意思疎通能力のおかげで会話をする必要がないのに鳴くのは何故か?
王に近づく為である。
この3匹は不思議だった。
ただの幼獣一匹で何をそんなに集まっているのか
どう手を尽くしても後は死ぬだけだ
なのに泣き自分達に背中を向けているのが不思議でならなかった。
そんなに大切なのか?
魔人の一匹は興味本位でその遺体を壊してみることにした。
魔人の一匹が石をフーゴの遺体に飛ばす。
ピっ
石は消えた。
「遺体に手を出すとはどういう了見だ?モンスター共?」
そこには青筋を浮かべた男(流閣)が居た。
「流閣、手を出すなよここはエルフの連中がカタをつける」
目の前のエルフが両手に爆炎を纏わせ突っ込む。
「ギッ!」
魔人達は即座に散会
だが既に一匹
爆裂音と共に顔が消し飛ぶ。
「ボムズ・ハンド……」
残った魔人が全身の甲皮を硬化させる。
キーマは飛び上がりつま先から爆発魔法を発生させて加速、高速のかかと落としである。着弾時に爆発
「ボムズ・アクセル・インパクト…」
その真後ろに隠れていた最後の魔人は魔撃を放つ
自身の風魔法を肘先に纏わせ
蟷螂拳を思わせる動きでキーマの眼前に迫る。
キーマは脚を胴体に挟み込み側面から爆炎魔法を使い
「うおおおおおお!ボムズ・プレス!」
ぬっちゃりとした音の後胴体を寸断された魔人の死体が転がった。




