仙力
久方ぶりに俺は仙力の里に帰郷した。
その後宴会をし今まで戦った話をし、今回の戦争の中で里の死傷者がいない事を喜んだ。
その翌日
親父の幻斎に連れられて仙力の里より更に奥の禁忌の山に入った。
幻斎が奥の祠のような場所に案内した。
「鉄斎よ、お主にはこの気功と呼ばれる術の起源と先人達が編み出した奥義を授けよう。」
「奥義ってのは以前」
「この地に縛る掟とも呼べる。」
「まずは気功の起源から始まる。オオアザ国建国以前より気を操る者正確には気の発現してしまった者達が迫害され、惹かれあい、集まって仙力の里の前身である気功集が生まれた。そして気功とは自然エネルギーの感知から始まり循環、増幅、発現、変化、最後に効果になる。」
「そうだろうな」
「奥義と呼ばれるシロモノはこの里の中で派生させ、育んだ技を宗家の当主に還元され新たな技になる。…まぁ儂よりも前の当主が良くて3つの流派の掛け合わせが限界じゃったがの」
「まぁ奥義ってのは突き詰めた気功技って事か?」
「それとは根本から違うモノを身につけるためにこの祠があるのじゃ。
この祠の奥には魔素の含まれていない純粋な空気がある。そしてその中に古来より先人たちの気の練り残しが残っておるそこに行けば全てわかるはずじゃ」
「わかったよ。」
鉄斎は祠に潜り奥の幻斎が言っていた先人達の気の残り香に誘われてそこで座禅を組む。
すると数分後直接頭の中に流れ込むイメージ。
恐らく初代から連綿と続く記憶が頭に強制的に入り込んでくる。
技の修練
気の練り方。
当時の時代背景
幾万もの記憶と感情が襲いかかる。
現実での一秒が
鉄斎にとって1年は経過するような
果てしない感情と記憶の濁流
ノウハウがいやでも積み上げられるように
「あああああああああああああ!!!!!!りりりりりりりりり!!!!!!!!うううううええええええええけけ!!!!!!れ。ここなのためぬにてりけにめねねへへせええええええええええええええええええええええけええええてめそねねててけけねねけねえええええええええ!!!れれれれ!!!れ!!!!!」
その様子を祠の外から聴いた幻斎が
「始まったか。この試練を乗り越えれば一皮むけるのじゃが……いや信じるしかあるまい儂の息子を」
脳が沸騰するような強烈な感覚
目は充血し
鼻血は吹き出て
耳にはジェット機のエンジン音
拷問にも等しいこの時間の中で
鉄斎…いや、鉄心は前世の記憶…ではなく決意?きっかけを掘り起こしていた。
―俺は…
―誰だ?……
―何故こんな所に…
―居る?……
―何故記憶を…
―失っていない?…………
―…………あぁ
―思い出した。……
―…なんで裏の世界まで飛び込んだ?
―…表でも充分名声は得られただろうに…
―…何の為に?
―誰の為に?…
―何故戦う道のみ取った?…
―……他にも道はあった…
―…戦いたいから?…
―それは勝つようになってからだ…
「……ハハッ」
―そんなもん決まってる…
「強く!!なりてぇからだ!!」
瞬間
鉄斎の心の中に真理が見え始めた。
それから一ヶ月の時が経つ。
鉄斎は祠から出てきた。
未だ肉体の衰えは無く
身体から吹き出る闘気の
透明度が増し
その目はあらゆる物を捉え
その耳はどんな音も見逃さず
その肉体はどこまでも
澄んでいた。
幻斎が
「どうじゃ?先人達からの知恵は?」
鉄斎は穏やかな表情で返す
「どうだろうな、ただ今は太陽の光さえ俺自身の力になりそうだ」
そのどこまでも澄んだ目を見ながら幻斎は内心
(成ったか。)
「今のお前ならわかるだろう気功の起源そしてその奥義が」
「あぁ」
「まぁお前は練気の総合的な期間が短いからそこまで多くは練れまい」
「親父の10分の1以下だろうな」
「そう、じゃがそれは年月をかけてゆっくりと増えるものじゃ」
「じゃがその理の上にあるのが奥義じゃ
今お前が掴んだ感覚、宗家では、拡深覚と呼ばれる代物なんじゃがお前が8歳の頃から知覚しとった今まで気功の感知に暫くズレが生じる。その間に先人達の知恵から自分だけの気功を見つけよ、それが奥義となろう。」
「ちなみに俺が気功を使えるようになるのに後何ヶ月掛かる?」
「まぁ代によってまちまちじゃが三ヶ月くらいかの?」
「そりゃ…まぁ…気の長い話で」




