暗部
約束の店キャプテンに赴いた鉄斎と流閣
店の中央右の丸テーブルの席にはリンキーが座っていた
「やぁ君らだけかい?」
鉄斎は間髪入れずに答える
「悪いが、レナの話を聞く限りアンタとの話ではレナは同席させられんからな」
―昨日の晩、宿にて―
レナは語った
「私は砂の国ナエルの貴族で暗殺を司る一家ファタール家の一員、幼少期から歩法から呼吸法、暗器の扱い、口数すら減らす生活でした。ですが私は能力が低くて一族を追い出されました。家長の父は言いました。「すまない、お前の能力の限界に気づいてやれずロクな女の子らしい生活も送らせてやれないでそしてお前は暗殺者として大成しないだろうならばこの国を出てなりたい自分を見つけなさい」…とまぁ兄は私の事を溺愛していて家族の一員のままにしようと父と最後まで言い争っていましたが、そして私は生き抜く為に結局仕込まれた技術を使ってジンバルス王国に仕えました。」
鉄斎はその話を聞き
「何故兄がお前に会いに?」
レナが思う
「私が考えられる理由は4つあります、
一つ目は一族の誰かが死んで私の協力が必要な場合
二つ目は私がジンバルスで関わった案件を知りたい場合
三つ目兄が一族を乗っ取った場合
四つ目ナエルの国ではなく他の国が私の身柄を欲した為
以上の四つが私には考えられます。」
この説明に一同が目を丸くした。
そしてその目を丸くした理由を語ったのはニーカだった。
「レナちゃんってこんなに喋れる子だったんですね!!」
レナは驚く
「えっそこ?」
鉄斎は口を開く
「まぁどこの家庭もある程度世間一般から外れた所はあるからなぁ貴族でしかも暗殺業だろう?なおさらだわなぁ」
流閣も続く
「僕に至っては才能あるから師匠の養子になったのでまぁ気持ちは共有し辛いかな」
「まぁレナの経歴はわかった、でお前どうしたいレナ?」
「私は、みんなと一緒に居たい。」
鉄斎は流閣、ニーカの表情を確かめて言う。
「じゃあ決まりだな」
―現在―
リンキーは肩を落として
「そうかい…でも話は聞いてくれるんだね?」
鉄斎は頷く
「あぁ」
リンキーは
「事の始まりは、僕の父が死んだ事から始まるそして次代の家長を決める事になったんだけど兄弟みんな野心家でねぇ、ファタール家は頭領…あぁ君らの国の皇帝に当たるね、まぁ頭領のみ関係で国内では他の貴族とは関係を持たないような閉鎖的な立場を取っていてね、頭領は現在病床にあるし、外部から人は呼ばなくて立会人が居ない状態になっちゃってね、家長を決める立会人を元親族のレナにお願いしたいんだ」
鉄斎が口を挟む
「レナは勘当された身だろう、そんな話通ると…」
リンキーは頷く
「そのとおり、一族がレナにした事から考えたら当たり前だ、でそんな交渉役をレナを溺愛していた僕に任せられた訳なんだけど昨日会いに行ったら後ろに隠れられるしお兄ちゃんしょんぼり、なんだけどまぁ正直今のファタール家は陰謀渦巻いて互いに足を引っ張りあってる、こういう裏のトップは早急に決めないと不味い。ただでさえ周辺国には恨まれてるナエルの国だ、裏からの牽制がない今なら戦争の準備までいかなくとも他国と協調を図れる筈だ」
と話を広げていくリンキーに対して
「だがそんな話はレナには関係ない」
と鉄斎はバッサリと切って捨てた。
「まぁそれもそうだね、この一家がバルカザン帝国の干渉を受けて隣国のジンバルス王国に害を為すなんて事も関係ないよね?」
流閣が震える。
「貴様ぁ!」
鉄斎はその様子を見て思う。
(確かにレナがジンバルス王国に正式に任官してたらこの話の流れだろうがやつはあくまでグワイガンに雇われてたからなぁグワイガンから面倒見てくれって連れてきたし事実上その話は俺らには交渉足り得ないな)
「まぁレナは昨日アンタが見てた通りそこの流閣と恋仲だ、ジンバルスに戻る事もあるめぇ、それになぁジンバルス王国と俺らの故郷オオアザの国は同盟関係だぁ。同盟国に不利益を被るかもしれないてめぇをおいそれと返すとでも?」
空気が一瞬にして凍る
不意にリンキーは右太ももに仕込んでいたナイフに手をかける。
「とりあえずは、この話レナにはしておいてくれないかな?」
「まぁそうだなとりあえずレナに…」
鉄斎は言い終わる前に机を蹴り上げリンキーにぶつける!!
ばきいいいい!!
リンキーは後方に弾け飛ぶ
「…の前にテメェ交渉の場で凶器を持ち込むだけじゃなく手をかけたな?」
リンキーは吹っ飛ばされるも着地。
「ごめんね正直横の彼の殺気に当てられちゃったからつい」
リンキーは周りを見渡し
「もぉこの店は使えないなぁ、まぁレナの返答を2日後に君に聞きにいくよ。おっと今度は凶器無しでね」
リンキーは静かな足音で出て行き、
鉄斎は息を吐き出す。
「フーッこりゃマジでキナ臭いなそれにしても流閣〜交渉の場で声を荒げるなよ〜他にも客居んだからさー」
流閣は頭を下げ
「すみません、ついカッとなっちゃって…それにしてもあの男、服の中に相当な暗器を持ち込んでいますね、しかも足音でわからないほどに隠してる。」
鉄斎は答える。
「あぁ野郎、ナイフはブラフだホントは左手首裏の毒針だろうよ。まぁとにかくレナに話すかぁ」
流閣は頷く
「ですね、」




