Head-on collision
このタイトルの意味は正面衝突です。
トーナメント初日
実況「本日午後から王者リベルド対挑戦者ヒーポ、今大会屈指のハードアタッカーがぶつかります。トーナメント初日という事もあってか闘技場の外まで観客がズラリと居ますね観客席の中にはちらほらと闘技場達の姿も見えます。本日の解説はハーシーさんよろしくお願いします。」
解説「よろしくお願います」
リベルド控え室
「今日の対戦相手はどう見るかねリベルド」
リベルドは振り返り
「なんだサルミン来てたのかてっきりVIP席で観戦するかと思ったが」
サルミンは微笑み
「なぁにすぐに戻るさ、それでもやっぱり君の調子が気になってね、声をかけさせて貰ったよ。対戦相手は今大会屈指の打たれ強さと破壊力を持ってる、中々スリリングな相手だと思うが」
リベルドは黙々とアップをしながら答える
「問題ない、彼の拳は私へは届くことはないだろう」
ヒーポ控え室
ドアが開き外からある人物が入室する
「あっセイニヒさん」
「出るのかヒーポ」
「はい!」
ヒーポは明るく言い放つ
ガッ
セイニヒがヒーポの肩を掴む
「いくら打たれ強くてもあのチャンプの一撃は人を殺すぞ!!今ならまだ間に合う棄権しろ!!」
ヒーポは微笑んだまま首を振る
「僕は打たれるタイプの闘技者です、正直壊れ始めてます、でも最後のチャンスなんです!魔力の素養もない持って生まれた才能もないこの僕が強豪ひしめくこの闘技場で一番になれるという証明を!!そして手に入れました蹴り技を持たない僕だけが手にしたパンチャーの境地を!!」
セイニヒは拳を握り込み去り際に言い放つ
「馬鹿野郎が」
30分後
実況「両雄現れます、リベルドは落ち着いた表情ですヒーポの表情が強張ってるように見られます。」
解説「リベルドは通常通りですね、仕事を淡々とこなすそういった雰囲気を感じさせますね。一方ヒーポはここ3年でトーナメント出場クラスまで上り詰めたファイターです。ですがリベルドとの対戦経験はゼロ入れ込み過ぎとでも言いますか。」
実況「なるほど。レフェリーが試合中央で待機します」
リベルドは挑戦者ヒーポに対して
「君と会うのは初めてだねヒーポ君」
ヒーポは真っ直ぐ見つめ返して
「貴方に勝ちたくて今日まで戦って来ました。」
リベルドは澄んだ瞳で
「そうか、ならこれ以上の言葉はいらないな」
「構えてぇええ!試合開始!!」
リベルドはアップライトに構えヒーポはピーカブースタイルで行く
実況「ヒーポ左右に身体を振って近づいて行く、一方リベルド脚を高く上げ払う轟音と共に半円が描かれる!!リベルドの死域だぁ過去この領域から立って帰ってきた者は片手で数える程です。」
ヒーポはその領域から踏み込む。
リベルドが前蹴りを放つ。
ヒーポそれを正面からガードで受ける
鈍い音共にヒーポはさらに踏み込む
リベルドの表情が変わる。
(私の前蹴りを回避することなく正面から受け切るとは、この小さな身体の少年の何処にこの重さが?)
ヒーポはそのまま上半身を捻り蹴りを流し脚の付け根から腕を被せて肝臓打ちを放つがリベルドのエルボー・ブロックでそれを阻む
リベルドが疑問を持つ
(ありえない拳とエルボーがぶつかれば骨が折れるはずだが?この肘の痛み)
ヒーポはリベルドの懐に入り込もうとするがリベルドはジャブでヒーポの特攻を防ぐガッチリと固めたハズのピーカブーの隙間からジャブの拳がヒーポの顔面に飛び込んでくる
試合を眺めていたセイニヒは驚く
「あいつの突進を止めるのは容易じゃないまず足腰の強さから出る重さを持ったスピードそれに加えての強靭な腕力で固めたガード、あいつの怖いところは止まらない事だあいつと戦った相手は最後まで止められず仕舞いだったそれを左手だけで止めるかよ。」
ヒーポは感嘆とする
(すごいこの人はやっぱりすごい!!ガードの隙間を力の方向から拳の向きまで繊細なコントロールで僕の顔を的確に打ち抜いてくる!)
ヒーポはそれでも飛び込むそしてリベルドの拳の有効射程よりも内側に入り込む
ヒーポはコマのように下半身ひねり拳を打ち出す。
ヒーポの額から血が吹き出る。
(何が起こったんだ!?)
リベルドはヒーポを見下ろし思う
(君はミスを犯した、私の懐に入り込むあまりに失念していたようだ。肘の攻撃を受けて立っていられたものはいないよ)
ヒーポはそのまま
「うぁっあ!」
ヒーポはそのままパンチを繰り出す
不意を突かれたリベルド驚きのあまりヒーポのパンチをモロに喰らう
リベルドは距離を置き考える。
(一体何が彼を突き動かす?)
ヒーポはそのままジリジリとリベルドににじり寄る。
リベルドはそれを眺めながら拳おろして構える
(もはや肉体のダメージでは君は止まらないだろうならば精神ごと刈り取るしかない。)
これを観戦していたセイニヒがおどろく
「チャンプのオープンガードなんて初めて見るぞ」
肘打ちで途切れかけていた意識が回復して行く
ヒーポは
(まだ出せていないパンチャーの僕だけが身につけた技を!!)
リベルドは右脚の回し蹴りをヒーポの側頭部めがけて蹴り放つ
セイニヒは冷や汗を流す
(殺すつもりで蹴り込んでくる!!)
ヒーポはダッキングで躱すそして上半身を捻り下半身をバネのように収縮させて放つ斜め下からのアッパーともフックともつかぬパンチ
溜め込んだエネルギーが一気に解放されるような一瞬の静寂
リベルドは恐怖する
(このパンチはマズイ)
上背がないから
魔力がないから
センスがないから
持っていたのは足腰の強さと腕力のみ
脚をバネのように力を吸収させ並外れた体幹が一切の無駄なく身体を支え腕力が威力を底上げする。
パンチャーとしての威力の到達点上背のヒーポだからこそ放てるパンチ。
ヒーポはそのパンチがリベルドに当たることはなかった。
ヒーポが血を吐きその場で停止する
セイニヒが驚く
「馬鹿な!!あの回し蹴りの軌道を変えて顎に垂直に入れるとは!!威力は下がったろうがヒーポの意識は」
その小さな身体に宿るのは執念か、希望か、飽くなき羨望か、ヒーポは拳を振りかぶる!!
リベルドは右の捻りこむパンチを打ち込む
(本当に悲しいよヒーポ君が壊れ始めてなかったらあのパンチで戦局をひっくり返す事も出来たろう、格上の私に対して恐る事なく立ち向かった小さき戦士よ、闘技場で相見えることはないだろう。でも君の事は忘れない)
セイニヒが叫ぶ
「逃げろ!!ヒーポ!!」
ヒーポはそれでもパンダを放とうとする
「まだだ…だ」
ドゴォオン!!
ヒーポの身体がくの字に折れて倒れる、
「さらばだ小さき戦士ヒーポよ」
レフェリーが手を交差させる
「勝負あり!!」
ヒーポはその後担架に運ばれた。
これが闘技者ヒーポの最後の姿だった。
セイニヒは拳を地面に殴りつけ静かに呟く
「ヒーポ…あの馬鹿野郎が」
セイニヒの顔には一筋の涙が溢れていた。
トーナメントの試合の回は英語で行こうと思います。




