愛してる、愛してた
掲載日:2016/06/01
あたしはそっと席を立つ。
あなたは何も言わない。
もう、お互いわかっているから。
元通りにならないってことくらい。
あなたと出会ったとき、これ以上の人はいないと思っていた。
とても優しくて、とても暖かくて。
あなたも、あたしのことすっごく愛してくれた。
愛し合いされていたことは、いつもいつも感じていた。
何かあったわけじゃない。
喧嘩したわけでもない。
ただ。
あたしの中で、何かが壊れてしまったの。
あなたを嫌いになったわけじゃない。
他の人を好きになったわけじゃない。
今でも聞かれたらいえるよ。
「あなたのこと、世界で一番好き」
ただ。
あたしの中で何かが壊れてしまっただけ。
ただ。
あなたの愛情を受け入れる自信がなくなっただけ。
ごめんね。
本当にごめんね……。
あなたのこと。
今でも愛してる。
いや、そんなこという資格はない。
愛していた。
過去形。
あたしは後ろを見ないで歩き出す。
あなたから逃げるように。
そのとき。
懐かしいぬくもり。
懐かしいにおい。
ぎゅっと包まれて、あたしは動けなくなった。
風が何か言った。
その言葉に、あたしは涙が一つ零れ落ちた。




