(2)
「うまくいくかな」
校舎の窓から沈んでいく夕焼けを見ながら、僕はぽつりと不安を漏らした。
「分からないよな」
寛人は僕の不安をかき消すような言葉をすぐにくれなかった。ただそれも分かる。胸を張って大丈夫だと言える計画ではない。計画と呼ぶにはあまりに大きな不確定要素を抱えている。
寛人と話し合って考えた計画。
うまくいくかどうか、その不安は僕だけじゃない。寛人も同じなのだ。
「だよね」
僕は夕日から目を逸らす。
何しろ全てが初めての事なのだ。実行日が決まった事で緊張と不安がおさまらなかった。
「違う」
「え?」
寛人の声が少し強さを帯びた。
「計画が甘いなんて事は分かってる。お前が不安なのも分かる」
「……うん」
「うまくいくかどうか。結果がどうなるかなんて、計画だけを眺めてても分からないし、不安になるだけだろ」
「そうだね」
そこまで言うと、寛人は僕の方を見据え、僕の肩をこついた。
「うまくいくかどうかじゃない。やるかやらないか。それだけだろ」
寛人はにっと少し頬をあげた。
そうだ。寛人の言う通り、今回の計画はやるかやらないか、その一点に尽きるのだ。
すぐに不安が消えるわけじゃない。不安は不安だ。でも寛人のおかげで勇気は増した。
やるべき事は分かってる。
「やるよ」
寛人がやったように、僕も寛人の肩を拳でこついて見せた。
寛人がそれでいいというように頷いてくれたのが頼もしくて嬉しくて、僕も少し笑った。