表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

(2)

 小学校の六年間を終え、中学校という新しい環境に期待と不安を感じ入学した初々しいあの頃から一年という月日が流れた。小学校と比べて体感的に違う事といえば授業内容の難しさと、生徒数の多さだ。一クラスの人数は小学校の頃の倍以上だ。

 授業はつまらないが、人間関係はおおむね順調だ。違う地域の小学校の軍勢に今までの平和が脅かされるのではないかという不安もあったが、蓋を開けば自分を取り巻く環境はいい形で収まっている。

 運動部なんてバリバリ身体を動かす気もなければ、文芸部のように地味に何かに興じる気にもなれないながら、この学校では入部が必須の条件の為、放送部員なんて誰も注目しない何の張合いもなさそうな所に所属したが、結果この選択も正解だった。たいしてする事もないし、開放的な空間を自由に使う事が出来る権利は大きい。

 

 それなりの毎日。それなりの日常。

 大きな文句や不平はない。

 はずだった。


「ハロー、まさまさー」


 髪をなびかせ、軽快なスキップで志乃が僕の横を通り過ぎていく。はじける笑顔とはこういう顔の事を言うのだろうなと志乃の笑顔を見ているとそう思う。

  

 ――ああやって笑えるのって、幸せだよな。


 僕はスキップする彼女の背中を小さくなるまで見つめる。

 保之のにやついた顔が脳裏にちらついた。

 自分は答えを知っていると言ったあの自信に満ちた卑しい笑顔。


 ――そうだよ。


 いつか言ってやってもいいかもしれない。その時はこんなふうに言ってやれば満足するだろう。


“今の僕には、藤崎志乃しか見えていない”


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ