(1)
「つえー」
「なんだよこいつ、マジ硬ぇんだけど」
「押せ押せ。ごり押しで勝てるって」
僕と達雄と保之と寛人。男四人で固まって携帯用ゲーム機のボタンを必死で押しまくる様は冷静に見ればひどく滑稽な姿だが、少なくとも僕以外はそんな事など全く気にしていない。画面の中で暴れ狂うモンスターを倒す事に全神経を集中させていて、外の世界の事など全く気にも留めていない。
放課後の放送室の狭い空間で過ごすいつもの時間。家に帰ってからまた集まるのも面倒なので、最近はこうして放課後になると皆で放送室に集まりゲームに勤しんでいる。無論、こんな事が先生にバレれば怒声を浴びせられ、ゲーム機は没収され、親にも報告されどやしつけられる。考えればリスクだらけで、そんな事なら大人しく帰ってから友達の家やらで集まればよいのだが、放送室という空間でリスクと時間を共有している事がなんだか青春ぽくって好きなのだ、なんて思ってるのはひょっとして僕だけだろうか。とりあえず幸い今の所先生に見つかった事は一度もない。
こうして安息とまで言わずともそれなりに平穏な空間と時間を手に入れられたのはひとえに放送部員である僕のおかげだ。この部屋の鍵は僕が管理しているようなものだった。この中学で唯一の放送部員である僕の特権だ。
さて、ゲームにちゃんと意識を戻そう。
戦況を確認すれば状況はあまり芳しくない。圧倒的な敵の戦闘力の前に皆成す術もないといった様子だ。
「まさ! ちょっと何とかしてくれよ」
「俺らじゃやっぱ歯が立たねえよ