第四話
特にぶらぶらと、シアと市場に歩いていく間に、いろいろと教えてもらった。まず、この国について。名前は特に決まっているわけではないが、常夏の公国と呼ばれているそうだ。名前の通り多少の寒暖差はあるが、それほど寒くなることはない。そのため、安全な市壁の中で服を着ようとせず、足も簡単なサンダルを履く。当然、肌寒いときは一枚はおったりするがその程度だ。その代り、市壁の外、特に森に入るようなときは、虫に刺されたり、木の枝で引っ掻かれたりしない様に、長袖長ズボンが基本だ。足元も、頑丈な靴を履く。市壁内でもブラジャーのようなものを着けている女性がいるが。皆、かなり胸部の発達された方たちだ。垂れたくないそうだ。必要なら服を着るし、必要ないなら全く着ない。それが常識だそうだ。
市場はかなり活気にあふれていた。店には大量の商品が並び、それを買い求める人たちも大勢だ。当然、服を着ている人などおらず全裸だ。八百屋、魚屋、肉屋、道具の類を商う店に、子供相手にお菓子を売る店。しかし、やはり服屋や仕立て屋は無かった。
「服なら道具屋で作ってくれるよ。」
シアは籠の中の物を売り払うと、一軒の道具屋に入っていった。餞別代りに腰袋付きの帯を買ってくれるそうだ。この袋には普段、財布やちり紙などの小物などを入れておく。
「おねぇさん。こいつに帯を一本ね。あと矢が少なくなってきたから発注お願い。」
「あいよ。お兄さんこのじゃじゃ馬娘の手綱を取るのは大変だろうけど、頑張ってね?」
そういいながら道具屋のお姉さんは、僕の腰に次々と帯を当てていく。
「うーん。緑と青どっちが好き?」
「あ、青がいいです。」
「じゃあこの色でいいかな?」
道具屋でシアが代金を払った後、領主の館に向かった。しかし、その前に自然が呼んでいる。出すものを出してしまいたい。
「シア。トイレはどこなの?」
「おしっこ?案内してあげるわ。」
そういって路地裏にある日本の公衆トイレより少し大きい建物に入っていった。建物の中には右側に小便器だろう物と、左側にしゃがんでするタイプの物が並べて設置してある。一番手前にはなぜか滝があった。これが一つしかない入口から入った途端に見えた。個室が無いどころか、仕切りすらない。そんな中へシアは入っていくと、くるりと左を向き、腰を突出しシャーとやりだした。すぐそばの滝?のせいで音はよく聞こえないが、体から出ていく様子は丸見えでありそれを気にする様子もない。僕がその様に固まっている内にシャーとやっていた物は止まり、軽く尻を振るった後、腰袋から出したちり紙で拭った。なお、彼女は僕の個人的見解ではあるがかなりの美少女である。
「おしっこするんじゃなかったの?」
トイレは水洗だった。入り口わきの滝のようなシャワーの排水で流すそうだ。シャワーは体が汚れた時や暑くてたまらないときなど、街中に居る時はしょっちゅう浴びるそうだ。このシャワーがそこらじゅうにあることも服を着ない理由の一つだそうだ。体が汚れない様に服を着るより、汚れたら洗う方が楽だからだ。シャワーで洗い流し、腰袋に入れている手拭いでざっと拭いてしまえば気温が高いのですぐに乾く。合理的だと言えるのか?