第三話
シアはズボンを脱ぎ。シャツを脱いだ。しかし、残念な事に下着姿を拝むことはできなかった。シアは下着を着けていなかったからだ。つまり、僕の目の前に居るシアは今、素っ裸である。一糸も纏う事の無い全裸である。すっぽんぽんなのである。
「えっとシアさん?なんで脱いでるの?」
礼儀正しく相手の目を見て聞く。同時に服を着ていた時には平原かと思われていた部位が目に入るが、これは不可抗力である。話をするときは相手の目を見ましょうと、幼稚園ころ初恋の先生に言われたからね。少々前かがみになっているが、これもまた不可抗力だ。つーかシアが悪い。
「え?脱がないの?」
そんなキョトンとした顔で言われても困る。恥ずかしくないのかと聞いても、やはりキョトンとしている。
「恥ずかしくないけど?普通でしょ。市壁の中でも服を着ているのなんて一部の旅人くらいだよ?市壁の魔法のおかげで虫も出ないし、日差しも強くないのに服なんていらないよ。」
そんな事を言われても、目の毒だ。腰袋付きの帯を巻き、鉈を差していくが露出具合はほとんど変わらず。ほぼ全裸だ。鉈は外では左腰に差していたのに、今は右に差している。
「別に服を着てはダメっていう法は無いから着ていても大丈夫だけど、私まで変な目で見られたくないから近づかないでね?」
…………………マジですか。
ローマではローマ人のするようにせよ。というが、限度というものがある。しかし、シアに領主の館まで連れて行ってもらえないと困る。一度服を着たまま出たが周囲から凄く注目された。おばちゃんたちがこそこそと話だし、若い女性が子供を連れてそそくさと離れていく。そして、外に出たくなったところでダメ押しが来た。
「おにーちゃん。どうして服を着たままなの?変なのー。」
5歳くらいの女の子にそういわれた。答えに詰まっていると、母親だろうか?女性が走ってきて女の子を抱え逃げて行った。
「変な人に声を掛けちゃダメって言ってるでしょ!」
ここで僕は服を脱ぐ決断をした。だって、これは完全に不審者扱いじゃないか!
僕が不審者扱いを受けている間、シアは全く助けてくれなかった。それどころか近寄ろうともしなかった。小部屋には逃げ帰るとすぐにシアが入ってきた。
「だからいったのに。で、どうするの?脱ぐの?脱がないの?」
「脱ぎます。」
残念だがあの視線に耐えてシアについていけるほど、根性は座っていない。
「じゃあさっさとして。」
現地民に従ったよ。つまり、僕もすっぽんぽんの全裸だ。
「それじゃあ、行こうか。ほら。」
そういうとシアは僕の手を引っ張った。帯を巻きなおしているシアと違い、僕は正真正銘一糸纏わぬ全裸である。