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夜と、巡る冬  作者: 罰歌
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夜と、巡る冬


「春の足音がすぐそばに近づいているね」


 なんて、夜遅くに彼と通話をしていたら言われた。彼はこの手の表現が好きだった。


「そうね」


「暦の上では、明日で冬は終わるんだ」


「ええ、知っているわ」


「そうか」


 そうなのだ、寒さはいまだに厳しいままなのだがもうすぐ春になってしまうのだ。日付が変わってしまえば、明日が冬の最後の日なのだ。

 日付が変わるまで、あと23分。

 カーテンをめくり、窓の外を覗いた。星が冬だからか、いつもより多く見える気がした。


「最後の冬の日を楽しもうか」


 そう、明日は彼と過ごすのだ。

 しかし、最後の冬、という表現がなぜかとても自分の中に、不純物のように残った。

 しばらく、その不純物が一体何で出来ているのか、その正体をじっくりと眺めてみた。だけれど、その正体は案外簡単なものだった。


「違うわ」


「え?」


「違うの、明日は最後なんかじゃない」


「明後日は春なんだよ。じゃあ、明日は最後の冬じゃないか」


「いいえ、表現が違うの。冬は、夜と同じように巡るのだから、決して『最後』ではないでしょう?」


 そう、あの不純物の正体は暦の冬に対する、彼の中の感覚と自分の中の表現の違いだったのだ。


「まあ……」


「ごめんね、ただそれが言いたかっただけなの」


 そう言って笑う。彼も、「そうか」なんて言って笑った。

 お互い文芸部であるため、時々このように表現のぶつかり合いがあるのだ。今日の、冬に対する表現ではこちらに軍配が上がったようだった。


 そう、冬は巡るものなのだ。

 決して、終わるものではない。夜と同じで、またやってくるのだ。

 気が付けば時刻は、0時ぴったりになっていた。随分と気がつかないうちに話していたのだろう。


「それじゃあ、おやすみ」


「おやすみなさい、良い夢を」


「ありがとう」


 電話を切ると、冬の夜特有の静けさが辺りを包みこんでいた。春の足音が私にまで聞こえてきそうだった。

 今日はぐっすりと眠る事が出来そうだ。




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