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夜と、巡る冬  作者: 罰歌
4/7

夜の帳



 暗闇が覆うのは、もう夜中になってしまったからだろう。


 冬の夜は、床まで凍ってしまったかのように感じる。素足をそっと指先からつけると、そこから薄い氷が伝って、包まれていくかのように感じた。

 私は意を決し、踵をつける。するとパキッと音がして、薬指から土踏まず、踵、くるぶし、そうして脹脛まで包んでいた氷が割れた気がしたのだ。

 左足の次は右足と、両足を床につけた瞬間、ぞわりとあまりの冷たさに鳥肌が立ってしまった。体の芯から凍ってしまいそうだった。

 安いアパートだから、壁が薄い。だからきっと、冷気がやってくるのだろう。

 ふと、実家の座敷を思い出した。あの部屋も、確かに日光は入ってくる筈なのに、冷凍庫かなにかかと錯覚してしまいそうなほど寒かった。いつも部屋には菊が飾ってあった。こっそりと夜中に見た時、その菊は輝いて見えた。

 そっと、なるべく音をたてないように一歩踏み出す。大きな音を出してしまえば、誰かが起きてしまう様に思うのだ。この部屋には私以外誰もいないというのに。

 温かい飲み物が急に飲みたくなってしまったのだ。一度飲みたいと思ってしまっては、もう我慢が出来なくなってしまった。


 氷柱が逆さ向きに生え、足の裏を刺す、そんな寒さだ。

 もちろん、足元だけで無くて体を包み込むように寒い。それでも、一番寒いところは足元なのだ。

 夜なのに、足元が見える。それはきっと、今日が明るい月の日だからだろう。窓から入る月の光が眩しいくらいだ。部屋全体に薄く張った氷が、月の光で輝いて見える。


 キッチンに立って、食器乾燥機からマグカップを一つ取りだす。常備しているティーバッグを一つ手に取り、あける。お湯で温めておいたカップにお湯をそそぐ。カップに蓋をして蒸らす。

 蓋を開けた時、白い湯気が溢れた。けれど、その湯気さえも空中ですぐさま凍ってしまったかのように思われた。

 私はそろりそろりと慎重にこぼさない様に、ベッドまで戻る。毛布の間に足を滑り込ませた時、少し前のぬくもりが残っている事に少し驚いた。

 淹れたての紅茶を一口啜る。


「あたたかい」


 思わず、そのぬくもりに呟いてしまった。

 足先の薄い氷が溶けて、毛布を湿らせたように感じた。

 時計の針が揺れたのを、視界の隅に捕えた気がした。時計の繊細なその針に、月の光が眩く反射した。


 時刻は夜中だった。夜の暗闇が、月の光ごと、辺りを静かに包み込んでいた。



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