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人形姫魔王物語  作者: ムロヤ
一章 魔王誕生?
8/37

戦闘

PVアクセス数がさらに倍以上に増えていました!!

ポーン(  Д )⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒...。....。コロコロ

驚きのあまり思わず目薬を差してから、再度確認してしまいました。

「うぅ……」


 私の視界の隅で、きわどい衣装に身を包んだリジュが耳まで真っ赤に染め上げて、涙目のまま膝を抱えてうずくまっている。


「いや~、お姉さん満足満足」


 そんなリジュを見ながら、ミリーゼはホクホクとした表情で本当に満足そうな顔をしていた。


「ミリーゼ。少しは手加減してあげてください」


「え~! お姉さんは良かれと思っただけだよ」


 そんな私の注意もミリーゼには意味がないようで、まさに馬の耳に念仏といった感じだ。


「それよりもべんけい。これでリジュちゃんも連れて行ってあげてね」


「はぁ。わかったよ。もう少ししたらモンスターとぶつかるから、装備の確認でもしておけよ」


 べんけいはそう言って元の先頭に戻って行った。

 そしてべんけいの声は他のダークエルフたちにも聞こえており、全員がもう一度自分たちの装備を確認を開始していた。


「私たちも装備の確認でもしますか?」


「う~ん……そうしようかな? でもお姉さんはあんまり武器って持ってないんだよな~」


 ミリーゼはそう言って自分のアイテムボックスと睨めっこを始めた。私も自分の装備をどうするか、ミリーゼに習ってアイテムボックスに目を通し始めた。


「そういえばエリスリーゼ。お姉さんたちは戦闘中は何をしてればいいのかな~?」


 そうやって二人で空中に視線を向けていると、ミリーゼがそんなことを聞いてきた。


「……そういえば何も聞いていませんでしたね」


 べんけいに部隊の指揮を任せたのはいいが、よくよく思い出してみると私たちには何の指示もないことを思い出した。


「お姉さん困るな~。……あ、これなんかいいかな?」


 ミリーゼはアイテムボックスから一本の包丁・・を取り出した。


「……包丁ですか? それは生産用の武器では?」


 私の記憶では武器には生産用と戦闘用の二種類があり包丁は前者で、装備していると料理を行うときの成功率と完成した料理にボーナスが付くという物だったはずだ。


「そうそう、でも戦闘でも一応使えるよ~。お姉さんは武器スキル覚えられないから、武器はどれ使っても一緒だからね~。それなら使い慣れてる物の方がいいかな~って。それにあんまり攻撃力の高い物を装備してると、体に慣れる前にこの辺のモンスターが居なくなりそうだしね」


 そしてミリーゼは空中に向かって見事な包丁さばきを披露した。

 それを見ていた周囲のダークエルフたちも、彼女のあまりの速さの包丁さばきに愕然としていた。


「そうですか。では私もそうしましょう」


 ミリーゼの言うようにあまり高威力の武器では、ダークエルフたちの狩りの邪魔にもなってしまうので、私もミリーゼに習って戦闘用ではない武器にすることにした。


 バサ


「これでどうでしょうか?」


 私はアイテムボックスから日傘・・を取り出して差した。


「え~と、それってピコピコとかハリセンと一緒でネタ武器だよね?」


「はい。ハリセンなどと違って、ダメージは1固定ではありませんが物凄く弱いです。特殊効果として光属性の攻撃を8割軽減してくれますが、今はその効果はあまり意味がないですね」


 そう言いながら私は黒い日傘をくるくると回しながら答えた。

 

「そろそろ行くぞ! 全員準備はいいか?」


 そのとき前の方からべんけいの声が聞こえてきた。 

 どうやら出発の前に武器を決めることはできたようだ。ただ周囲のダークエルフたちは、私たちの手に持っている物を見て心配そうな表情をしていた。



「……準備はいいか?」


 べんけいの出発の宣言から10分ほど移動したところに、今回の標的となるモンスターがいた。

 一角猪ホーンボアと言うモンスターで、見た目と体型は猪なのだが皮膚が灰色で鼻の先に角があるなど猪とサイを混ぜた様な形のモンスターだ。

 

「見ての通りあのモンスターは4匹程度で群れを作る。今のお前たちのレベルだとこの人数でも、よくて2体を相手にするのが限界だ。だからまずは俺の《咆哮》で動きを止め、そこにエリスリーゼとミリーゼ、俺の三人が先制攻撃をする。そうするとあのモンスターは俺たちとのレベル差を感じて逃げるはずだ」


 全員がべんけいの作戦を静かに聞いて頭に入れていく。


「そして4匹の内3匹は俺たちが倒し、残りの一体は後から突撃するお前たちで取り囲み一斉に攻撃をする。それともしも危険を感じたらすぐに下がること、死んだら元も子もないからな。いいか?」


 無言のまま全員が首を縦に振った。


「よし。エリスリーゼとミリーゼも良いな?」


 私たちも静かにうなずく。


「行くぞ。ガアアアァァァアアアアアア――――――――!!!!!」


 べんけいの咆哮が辺りに響き渡る。

 それを受けた一角猪たちは体を硬直させ、こちらに目を向けたまま動けずにいた。

 私たちはべんけいの指示通りに一斉に茂みから飛び出し、茂みから一番近いモンスターを残してそれぞれが敵へと飛びかかった。


「さあ、始めましょうか?」


 手に持っていた日傘を折りたたむと、私はその切っ先を一角猪へと向けてそう宣言した。


「《悪夢の刃(ナイトメア・エッジ)》)


 私は武器エンチャントの魔法を唱えた。

 魔法が発動すると私の持っている日傘に、黒い霧のような物が纏わりついてきた。これは自らの武器に状態異常《悪夢》の追加効果を付与する。

 そして《悪夢》の効果は相手を眠らせるものだが、普通の眠りとは違い一度掛かると時間経過か解呪でしか解けず、攻撃を受けても眠ったままの状態になってしまう。プレイヤーが嫌う状態異常の中でもかなり上位のものだ。


「はっ」


 私は黒い霧の纏わりついた日傘で、動きの止まったままの一角猪に攻撃をする。

 日傘の先端は鋭い杭のように尖っていたため、突き出した日傘は一角猪の肌に突き刺さった。


『ビギィィ!?』


 鋭い痛みを感じたせいか一角猪の硬直は解け、その体を動かして私の日傘を抜き取ると、背を向けて逃げようとしていた。


「あら、逃がしませんよ?」


 戦闘が始まる前まで感じていた体の違和感はいつの間にか消え、私は元の世界では考えられないほど体が軽くなるのを感じた。

 今の私ならどんな動きでもできるという確信があった。

 私はスカートをはためかせて逃げようとしていた一角猪の頭上を呼び超え、一角猪の前へと躍り出ると続けざまにもう一度日傘を突き出した。

 

『ビィィイ!!』


 突き出した日傘は一角猪の片目を抉った。

 元の世界でなら確実に嫌悪感を抱くはずの行動だったが、今の私は感じたことのない高揚感を覚えていた。

 

「この感覚……初めて《魔英伝》を始めたときの感動と同じです。もっと楽しみましょう」


 私は誰に聞かせるでもなくそう言うと、さらなる追撃を一角猪に与えた。

 

『ビィイ!? ビィィ――――――』


 そして4度目の攻撃の後、一角猪は状態異常に陥る前に息絶えた。


「あら? 弱い武器でもこのレベルのモンスターだと、この程度で死んでしまうのですね」

 

 息絶えたモンスターを見下ろしながら、自分でも驚くほど冷静に現状を把握できた。

 周りを見てみると、ミリーゼもべんけいも似たような状態だった。

 

「あとは彼らだけですか」


 二人から視線を外し、集団で一角猪を囲んで攻撃しているダークエルフたちを見ると、その中にはリジュも懸命に攻撃している姿があった。


「あ」


 そのときリジュが一角猪の攻撃を受け、私の方まで飛ばされてきた。

 

「大丈夫?」


「え? ……エ、エリスリーゼ様!? も、申し訳ありません!」


 飛んできたリジュを私は抱きとめてそう尋ねる。

 私よりもリジュの方が身長は高いが、この体の力ならリジュを抱えるくらい紙を持つのと変わりなかった。

 ただ私に抱きとめられたことに気が付いたリジュは、本当に申し訳なさそうな表情で頭を下げてきた。


「気にしなくていいのよ。それよりも大丈夫?」


「あ、はい。この服のおかげで全然痛くありません! ……すごく恥ずかしいですけど」


 最後のセリフは掠れていた。


「私、もう一回行ってきます!」


 それだけ言ってリジュは集団の方へと戻っていった。



 そしてリジュが戻ってから数分後、ようやくダークエルフたちは一角猪を倒すことができた。


「まあこんなもんか。よし次行くぞ」


 べんけいはその様子を見て、納得した表情でそう言った。


「あ、あの~……」


 その時、ダークエルフの青年の一人が恐る恐る手を上げた。


「どうかしましたか?」


 私がそう尋ねると、青年は恐縮しながらぼそぼそと喋り出した。


「せ、折角狩ったんですから、解体したほうがいいと思うッす」

 

 それを聞いた私やミリーゼ、べんけいはお互いの顔を見合わせた。ゲームではモンスターを倒せば自動で解体され、アイテムボックスへと行っていたが今倒したモンスターを見ると、死体は未だにその場所にあった。


「「「……」」」


 私たちは互いの目を見た。

 その目からは「お前は解体できるか?」という疑問が、言葉にしなくても伝わってくる。


「私は解体したことないのだけど……あなたたちは解体できるかしら?」


 私はダークエルフたちにそう聞くと、全員が躊躇いなく首を縦に振った。


「そう。それならこのモンスターたちの解体をしてください」


 「はい」という返事と共に、ダークエルフたちはモンスターの解体を始めた。


「これは予定外だな」


「そうね~。さすがにお姉さんも解体はしたことないかな~」


「私など解体どころか採取すらしたことがありません」


 私たちはダークエルフたちが手際よく一角猪を解体していく姿を、ただ眺めていることしかできなかった。


「いやエリスリーゼは王なんだからそれでいいだろ。問題は俺とミリーゼだな」


「そうね~。お姉さんは魚しか捌いたことないからな~」


 たしかにべんけいの言う通り、王様が獲物を解体するというのも変な話だと納得した。


「それは助かります。正直なところ解体は私の趣味ではありません」


「趣味は関係ないと思うが……まあ追々覚えるか、完全に他の奴に任せるかのどちらかだな」


「お姉さんは《働く妖精(コロポックル)》に任せよ~っと」


 その後はモンスターを狩ってはダークエルフたちが解体し、私たちはそれを眺めるということを繰り返しながら、ダークエルフたちのレベルを上げていった。

 そして一日が終わるころには私もミリーゼも、元の体以上に今の体に馴染み、人間の時には考えられないような動きまでできるようになっていた。

 

 余談だがモンスターの死体その物はアイテムボックスに収納できたので、ミリーゼは持ち帰って《働く妖精(コロポックル)》に丸投げすることに決めていた。



 今日の狩りを終えた私たちは城へと戻ってきた。


「おかえりなさいませ。お怪我はございませんか?」


 城へ着くとまずロンダルが私を出迎えた。


「ええ。ロンダルも私の留守中に何かありましたか?」


「いいえ。何の問題もありませんでした。あまりに暇でしたので、城中を掃除していたくらいです。姫様の展望浴場と大浴場の掃除も済んでおります。それで姫様、お願いがあります。村の者も疲れている者が多くおります。大浴場の使用をお許しいただけないでしょうか?」


「構いません。皆さんには獲物の解体もしてもらいましたし、今後大浴場は好きに使って構いません」


「ありがとうございます。皆も喜びます」


 ロンダルはそう言って頭を下げた。

 

「それじゃ~お姉さんは晩御飯の用意してくるね~」


「俺はちょっと町を見てくる」


 それだけ言うとミリーゼとべんけいはこの場を後にした。


「私も部屋に戻ります。ロンダルは彼らの道案内をしてください」


「畏まりました」


 ロンダルにダークエルフの集団の相手をお願いし、私も自分の部屋へと戻った。


「ふぅ。今日もいろいろありました」


 私は昨日から今日にかけてのことを思い出した。

 いきなりこちらに来たが、この調子なら問題ないどころかむこうにいる時よりも充実した生活のような気がする。


「……あら? そう言えば私、昨日ご飯を食べてないのに全然お腹が空いていないです」


 昨日からの出来事を思い出してみると、ご飯を食べた記憶がまるでない。


「ああ、思い出しました」


 私はすぐにその理由を思い出した。


 死霊系のモンスターアバターは空腹値という物がなく、空腹によるバットステータスがないという特徴がある。ただしそのかわり、一時的に能力をアップする料理系のアイテムを使っても、その恩恵を受けられないというデメリットがある。

 おそらくはそのせいで私は今、何も食べなくても空腹を感じないのだろう。


「……はっ!? では何も食べられないのかしら!? お菓子も?」


 私は自分の恐ろしい想像に戦慄した。

 お菓子が食べられないなど拷問としか思えないのだ。


「……試しましょう」


 アイテムボックスを探すと、すぐに目当てのものが見つかった。

 料理アイテムであるマジッククッキー。

 食べることでMPを回復するという物だ。

 

「……ごくっ。あむ! ……もぐもぐ……はぁ~、甘くて美味しいです」


 どうやら私の恐ろしい想像は違っていたようだ。

 ただどういうわけか、人間の時とは違い食べても満腹感というのか、お腹が膨れるような感じがなかった。


「もぐもぐ……もぐもぐ……」


「エリスリーゼ~! 一緒にお風呂入ろうよ~って、何食べてるの?」


 お菓子を食べているところにミリーゼがやってきた。


「こくん。いえ、お腹が空かないのでひょっとしたらこの体は、食べることができないのではと思いましてその実験をしていました」


「そういえばお姉さんも何も食べてないな~。お姉さんにもちょうだ~い!」


「どうぞ」


 私はミリーゼの前にマジッククッキーの入った袋を差し出した。


「おお!? 初めての味! これが異世界の味か~。ゲームだと味とかなかったもんね」


 この体で物が食べられるとわかった私は、ミリーゼと残りのクッキーを食べた後、二人でお風呂へと向かった。


 

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