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人形姫魔王物語  作者: ムロヤ
二章 魔王暗躍?
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テイマー

友人にペンタブ貰いました。

ちょっとトライしてみましたが、自分で描いた絵を見て「これは無いな」と、そっとペンタブは押入れにしまいました。

 べんけいが持っていたフレンドチケットを譲って貰った私は、さっそく召喚する人物の人選をミリーゼと共に始めた。

 まず考慮するべきは、現状で必要な能力を持っている人物。

 とりわけ今の必要なのはテイマーだが、ここはゲームと違い現実であるため生き物の世話となれば、かなりの労力がかかる。


「その世話が苦にならない人でないと、後々に面倒なことになりますね」


「そうだね~。現実の動物って匂いもあるしね〜。お姉さんはちょっと無理かな」


 何か動物にでも嫌な思い出でもあるのか、ミリーゼは苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。

 

「コロッケなどどうですか?」


「無理無理! あいつ昔、リアルの年齢聞いたけど、まだ小学生だったよ~」


「そうですか……ならヒモノは?」


「う~ん、お姉さんはあんまり話したことないかな~。でもあんまりいい噂は聞かなかったな~」


 テイマーは元々かなりのマイナー職業であるため、私達の知り合いにも多くいる訳ではない。そして、MMOであえてマイナー職業を選択するような輩は、必ずと言っていいほどに性格に一癖も二癖もある。

 そのため私とミリーゼは首を捻りながら、なかなかきめられずにいた。


「べんけい。エリスリーゼ様とミリーゼ様は何をあんなに悩んでいるんだ?」


 私たちの様子を見ていたクライスが、べんけいの方を向きそう尋ねていた。

 クライス以外にも、私達の行動が今ひとつ理解できないルナリア、ローレ、ガルドのヴァンパイア組は答えを求めるようにべんけいの方に視線を送っている。


 それとは対象的に、一度同じ光景を見ていたロンダル、リジュ、レドルはどんな者が現れるのか、心なしか楽しみにしているように見えた。


「ん? なんか新しい仲間を呼ぶらしいけど……さすがにわからないな」


 質問されたべんけいは、さすがにフレンドチケットでこちらに人は呼ぶという行為に半信半疑なのか、彼にしては珍しい困ったような表情をしていた。

 そんな中でも私とミリーゼはどんどん候補を上げては消してを繰り返し、次第に候補が居なくなってきてしまった。


「あっ! トリトンはどう?」


「トリトンですか?」


 そしてとうとう残りが少なくなってきたところで、あるテイマーの名前がミリーゼの口から出てきた。

 

「……正直に言って、私は彼が苦手です」


「ん~……確かに変だけどさ、もう残りが少ないよ?」


「……べんけい。あなたはテイマーの友人はいますか?」


 トリトンは確かにテイマーとして優秀で、あの性格なら現実に動物の世話をするとしても苦を感じないとは思うが、正直に言って私は彼の性格というかノリがかなり苦手だ。

 そのため、何とか彼を候補から外したいため、べんけいの方でテイマーに心当たりがいないかを聞いてみた。


「いない」


 が、彼の返答は素っ気なく、私の希望は打ち砕かれてしまった。


「……仕方ありません、トリトンを召喚しましょう」


 私は苦虫をまとめて噛み潰したような表情で、べんけいから譲ってもらったフレンドチケットを手に持つと、さっそくトリトンを召喚することにした、


「フレンドチケット使用。トリトン召喚」


 私がそう宣言すると、ミリーゼやべんけいを召喚した時と同様に魔法陣が展開され、そこに光が集まり始めた。


「へぇ」


「これは……」


「なんと!」


「綺麗ですね」


「……ん」


 その光景を初めて見るべんけい、クライス、ガルド、ルナリア、ローレはそれぞれの感想を口にしながら、その光景に見入っていた。

 そして徐々に光が収まるとそこには私とミリーゼの知るトリトンの姿が現れた。


「「は?」」


 ただし、現れたトリトンの姿は通常の状態とは異なり、あちこちに傷を負い大量の血を流しており、見るからに瀕死の重傷だった。

 その姿を見た私とミリーゼは思わず間抜けな声を上げてしまった。


「グフッ……我が……生涯に…ガハァ!!」


 ドサッ


 そんな状態でもトリトンは拳を天に突き上げ、何やら有名なセリフを言おうとしていたが、傷が自分で思っているよりも深いためか、最後まで言い切ることなく吐血して地面へと倒れた。だがその顔はどこまでも満足そうで、そのあまりの光景に全員が唖然としてしまっていた。

 というよりもかなり引いていた。


「エリスリーゼ~……なんか死んでるよ?」


「……とりあえず復活させてください」


 まさか召喚した瞬間に死ぬとは思っていなかった。


「はいは~い。えりゃ!」


 ミリーゼはアイテムボックスから〈反魂結晶〉を取り出すと、床に倒れ伏しているトリトンへと投げつけた。


「……はっ!?」

 

 〈反魂結晶〉の効果により、トリトンは死体から生者へと変わり勢いよく起き上がった。


「おはようございます」


「おはようございます? あれ? エリスリーゼさん? なんで僕はここに?」


「落ち着いてください。それよりも先ほどはどうしてあんなにダメージを負っていたのですか?」


 突然ここに呼ばれたため、まだ混乱しているのか辺りをキョロキョロとしているトリトンにそう声をかけ、先ほどの重傷の理由を問いただす。


「ダメージ? ……ああ! さっきまでギルド活動してたんですよ。 僕って一応ギルマスですから」


「ギルド戦でもしていたのですか?」


 ギルド戦は中規模戦争のようなもので、ギルド対ギルドで総力戦を行うものだ。それならあれだけの重傷を負っていた理由も納得がいく。


「違います。僕のギルドは《もふり隊》です! そう言えばエリスリーゼさんには説明したことがなかったですね! 《もふり隊》はテイマーだけのギルドで、モンスターをもふることに命を掛けるギルドです! 先ほどまでは最高レベルのモンスター、龍種で唯一羽毛を持つホワイトドラゴンをギルド総出でもふってました!」


 説明を聞いた私は、自分の耳がおかしくなったのかと思った。


「それは……テイムするためですよね?」 


 念のために聞いてみた。


「違いますよ。もふるためです!」


 ダメだ。話しが通じない。

 トリトンは元々ゲームとは思えないほどモンスターに愛情を注ぎ、それがいき過ぎて他者に延々とモンスターの素晴らしさについて語り出すという悪癖を持っているため苦手だったのだが、まさかそんな訳のわからない存在が集団で存在していたとは思いもしなかった。


「それで死んでペナルティーをくらったら意味がないのではないですか?」


「もふるためならペナルティーなんか怖くないですよ!」


 ああ、私はやっぱり彼が苦手だ。


「ミリーゼ。トリトンに現状の説明をお願いします。正直私には無理です」


 私はそう言ってミリーゼにバトンタッチした。


「ええ~!? お姉さんが!?」


 反論を聞く気はない私は、そそくさとべんけい達のいる場所まで移動した。


「あ~、なんか……すごい濃いな」


 べんけいはトリトンのことをそう評価したが、あれは濃いとかそんなレベルではない。

 今もミリーゼが現状を説明しているが、隙あらばモンスターの話に軌道がズレそうになり、その都度ミリーゼが修正を行っている。


「ああ、そうです。べんけいは彼に注意してくださいね」


「え? なんで?」


 べんけいにそう言って注意するが、彼は意味が分からないと言った表情で問い返していた。


「トリトンは曰く、獣人ももふる対象だそうですから。昔、私の所でも彼に獣人がもふられるという珍事件が発生して、獣人アバターのプレイヤー達のIN率が低下したことがあるのです」


「は?」


 私の説明を聞いたべんけいだが、余計に意味が分からなくなってしまったようだ。


「いずれ分かります。覚悟だけはしていてください」


「エリスリーゼ~。何とか説明終わったよ~」


 べんけいと話している間にミリーゼはトリトンへの説明を終えたようで、かなり疲れた表情で私の所へと戻ってきた。

 

「お疲れ様です」


「本当に疲れた~」


 そんなミリーゼの後に続いてトリトンもこちらに移動してきた。


「状況は理解しましたか?」


「はい! 僕はここでモンスターをもふればいいのですね!」


 何をどう理解したらそうなるのか分からないが、おおむね間違っていないので特に訂正はしないことにした。

 

「そうです。一応聞いておきますが、突然のことで不満などは有りますか?」


「ないです!」


 私の質問に、彼は即答で断言した。 


「理由を聞いても?」


「はい! 僕は動物が死ぬほど好きです! でも現実では重度のアレルギー体質で、動物に触れるどころか近づくこともできなかったのです。そこでVRで動物と戯れていたのですが、VRはどこまで行ってもVR。匂いなどの現実感がなく、最近は物足りなさを感じていました!」


 そんな時にこっちの世界に呼ばれ、アレルギーとは無縁の体を手に入れたので不満などあるわけがないとのことらしい。

 

「そうですか。それではあなたにも私の傘下に入ってもらいます。そして、最初の命令です。ミリーゼの作った戦車を引くためのモンスターをテイムし、その世話をお願いします。その際に部下を付けますので、モンスターの世話の仕方を教えていってください」


 私がそう命令すると、トリトンは目を輝かせながら「イエッサー!」と敬礼していた。


「それでは明日の朝からモンスターの捕獲を行いましょう。ロンダル、彼に開いている部屋を」


「承りました。トリトン様、こちらへどうぞ」


「ありがとうございます!」


 ロンダルに連れられ、トリトンが部屋を出て行くとようやく静けさが戻ってきた。


「何というか、ずいぶん威勢のいい方だな」


 クライスはそう言ってトリトンの出て行った扉の方を見やった。そんな彼の意見に、ヴァンパイア一同は首を縦に振って同意していた。


「ええ。それにしても《もふり隊》なんてギルド、初めて聞きました」


「お姉さんも~」


「俺は聞いたことだけあるな。うちのギルマスが、モンスターの情報を買って来てたギルドがそんな名前だった。たしかギルマスが《魔英伝》でも一・二を争う変人ギルドって言ってたが、あれを見ると納得だ」


 べんけいはどこか関したようにそう言った。


「《魔英伝》で一・二を争うですか?」


 聞きたくなかった情報に、私の気分は余計に沈んでいく。

 そんなところのギルマスを務めていた人物を召喚してしまったことに、少なからず後悔してしまっている。


「ああ。でも、悪い奴ではないっても言ってたな。ただ、慣れないと疲れるとも」


そんなべんけいの情報にこの場にいる全員が納得してしまった。

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