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人形姫魔王物語  作者: ムロヤ
二章 魔王暗躍?
22/37

報告

前回の質問に回答いただきありがとうございます。

回答が多かったので個別での返信はしませんが、全てに目を通させていただきました。

その結果、ほとんどの意見が「無くても大丈夫」だったので、今後も更新予告などはしません。

今後もどうぞよろしくお願いします。

「全員揃いましたね? それでは本日の会議を始めましょう」


 会議室にはいつもの面々に加え、今日はルナリアとローレ、クライスとガルドのヴァンパイア組も参加している。

 

わたくしまで参加していいのでしょうか?」


「……妾も」


 普段は会議にはクライスしか参加していないため、突然呼ばれたルナリアとローレは少々戸惑っているようだった。

 

「構いません。というよりも、今後のことはお二人にも関係がありますので、聞いてもらえないと困ります」


 戸惑っている二人にそう言って、私は会議を始めることにした。

 今日話合う予定の項目をロンダルに伝え、ミリーゼに作ってもらったホワイトボードへと書いていってもらう。

 

 まず一つ目は移住についての話合いを行うことになった。


「ではクライス。お願いします」


「移住の件だが、現在はおよそ3000人ほどを試験的に移住させた。今後はもっと増えていく予定なのだが、そのことで一つ尋ねたいことがある」


「なんですか?」


「この街……いや、エリスリーゼ様の国には畑などに適した土地はあるのか? この国に来る機会は増えたが、そういった場所を見たことがない。もしも無い場合は、農民などを移住させるのは厳しい」


 クライスはそう言って私の方へと視線を向けてきた。

 彼はおそらくこの国が1000年もの間、放置されていたことにより畑などが使えない状態なのではないかと考えているのだろう。

 たしかの農業をできる場所がなければ、折角移住してきたヒト達も餓えてしまう。そうなれば再び街から人が消え、折角の移住も無駄になってしまう。


「その辺りはミリーゼから報告をお願いします」


「は~い」


 ただ私とてそのことについては気が付いていたので、ミリーゼに頼んで《花園》の改良をしてもらっていた。

 

「現在お姉さんの方は、《花園》の改造は7割くらい完了してるよ~」


「《花園》?」


 聞いたことがない言葉に、事情を知っている私とミリーゼ以外は首を傾げている。


「簡単に言いますと。一種の農場のような場所です。昔はいろいろな花を植えていたのですが、1000年の間にほとんどが枯れてしまっていたので、その区画を農業で使えるようにミリーゼに改造してもらっているところです」


 《花園》は私がこのアライラを支配領域に定めた理由であるいろいろな種類の花の種を集めて育てていた、文字通りの花の園である。

 ゲーム時代はそこを眺めて楽しんでいるだけでもよかったが、実際にこの世界で生きていくとするなら花よりも農作物を作る方がいいという理由で改造に踏み切ったのだ。

 それに再び花畑にしたいという未練がなかったと言えば嘘になるが、1000年も放置されていたせいでジャングルのようになり、雑草が生い茂り肝心の花はほとんど枯れてしまったためもう一度種から集めるとなると、かなりの労力が必要になり、正直に言ってかなりめんどくさい。


「もともと花みたいな繊細な植物を育てるための場所だから、農作物を育てるのには最適な場所だよ~。それに周囲にある魔導具が植物の成長促進のエンチャントを掛けてるから、品質も良いし成長も早いし土地も痩せないからね~」


「そのような場所があるのか! それはここから近いのか?」


「すぐ近くです。会議が終わったら案内します」


 これで農民の移住に関しては心配はないはずだと考えた。


「そうか。なら農民の移住は来年からすぐにでも行えるな」


 ただクライスの答えは私の予想に反して、農民の移住は来年からということになった。


「すぐにでも大丈夫ですよ?」


「エリスリーゼ様の方は大丈夫でも、我が国の農民のほとんどは今年の種植えを終えてしまっている。その状態ではさすがに移住を募るのは無理だ。せめて収穫が終わらないと、折角の種も無駄になってしまう。それにいくら移住させるにも、畑の引継ぎなどは手続きが多いのです」


 私の疑問にクライスはそう言って答えた。

 現実に農業などやったことがないため、私にはそういうものなのかということしか理解できなかった。 


「農民に関しては専門外なのでお任せします。それで次の移住の予定は?」


 こう答えるしかなかった。


「ああ、農民の方はこちらで調整しよう。それと次の移住だが、べんけいとも話たが兵士などの戦闘職の者達を優先したいそうだ。私からの報告は以上だ」


「そうですか。それではべんけい。軍部の方の報告をしてください」


 クライスの報告を終了し、私はべんけいの方へと質問をした。


「とりあえず人手が全然足りない。戦力だけなら俺とエリスリーゼ、ミリーゼが居れば十分な戦力だが、治安維持なんかを考えるとかなりマズイ。とにかく今は人手が欲しい」


 たしかに今のところ私の国にいる兵と呼べるものはダークエルフが数十人いるだけだ。住人が現在

3000人ほどいる状況では治安維持をするにしても人手が足りないのは明白だ。


「たしかにダークエルフの方々だけでは厳しいですね」


「ああ、それにいくら俺たちが強くても、さすがに国なのに軍隊がないのは締まらない」


 暗にべんけいはこのままでは他国に舐められると言いたいらしい。


「分かりました。では移住もそのように。それと今のダークエルフの訓練はどうなっていますか?」


 私がそう言うとクライスは「承った」と答え、べんけいの方は何か言いにくそうに口ごもっていた。


「べんけい? どうしました?」


「あ~……ちょっとスパルタが過ぎたのか、何人か脱走した」


 彼の口から訓練の内容を聞いて、ヴァンパイアの王族達は顔を青ざめ、「それは逃げる」と口を揃えて言い、ガルドは「なかなか興味深い」と訓練内容に感心し、ミリーゼは部下に逃げられた形となったべんけいを笑っていた。


 その訓練とは、べんけいとの模擬戦だ。

 ただしべんけいはレベルが高すぎるため、装備する物はネタ武器シリーズのみ。

 その状態の彼がダークエルフ達を相手に、朝から晩までひたすら模擬戦をするという内容らしい。そこには休憩はほとんどないらしく、唯一休めるのは他の人が対戦してる間だけ。ただしその戦闘ももの凄い速さで終了するという。


「そんな過酷な訓練だけでも心が折れるのに、ネタ武器(そんなもの)で攻撃されたら立ち直れないですよ? なぜそんなことを?」


「武器の熟練度を上げるため。一応効果があるのは実証済みだ」


 べんけい曰く、ゲーム時代()に判明したことだがレベルと武器の熟練度が高い者が、自分よりも両方が低い者と戦うと、その差が大きいほど熟練度の上昇にボーナスがあるらしい。

 そのためよく初心者の武器の熟練度を上げるために、熟練者がダメージ1固定のネタ武器を装備し、教導と呼ばれて使用されていた方法らしい。

 今回のことはそれを実践したらしいのだが、ゲーム時代はネタ武器のことは広く知られていたが、今の世界の人にネタ武器は理解されず、ヘンテコな武器でひたすら叩かれるのに心が折れて脱走したものが多いらしい。


「ちなみに使ったネタ武器は?」


「剣はハリセン、槍は冷凍イカ、弓は恋天使キューピットの弓矢。こんなところかな」


 それを聞いたミリーゼは爆笑していた。

 その装備でダークエルフを追い回しているべんけいを想像したのだろう。

 

 ちなみに冷凍イカは穂先がイカの頭で、柄はイカの触手となっている。見たまんまイカで、なぜか敵に攻撃すると墨を吐く。

 そして恋天使キューピットの弓矢は矢じりがハートで、弓自体もおもちゃのような外観をしている。当たるとハートの光が発生するという、どちらも意味不明な武器だ。

 

 べんけいが実物をヴァンパイア組に見せると、さすがにこれには全員が引いていた。


「兵に関してはお任せしていましたから何も言いませんが、効果は有ったのですか?」


 これで効果は有りませんでした。などと言われたら、逃げずに訓練を続けている者達に申し訳ない。


「ああ。熟練度が上がったから、今まで以上に強くなってる。それは保障する。同レベルどころか、多少上の相手でも引けは取らないぞ。部隊としての連携も形になってきたしな」


 私の質問にべんけいは自信満々にそう答えた。


「分かりました。ほどほどに今後もお願いします。それでは次に内政や外交についてなのですが、これに関しては何も手を付けていません。というよりも手が付けられません」


 軍部についての話し合いを終了させ、次の議題を提示した。

 私の言葉を聞いたミリーゼやべんけいは当然という顔をしていたが、内政も外交も何もしていないと聞いたクライス達は驚きの表情を浮かべていた。


「なぜだ?」


 クライスは短くそう聞いてきた。


「私たちは完全に専門外ですから。なのでこの件に関しては、内政はルナリアに、外交はローレに一任したいと考えています」


「「……え?」」


 突然矛先を向けられた二人はポカンとした表情でこちらを見てきた。


「それでは次の……」


「あ、あの! お待ちください! わたくしは部外者です。そのような者に国の舵を握らせてもよろしいのですか!?」


 大人しそうなルナリアには珍しく、立ち上がりながら声を大きくしてそう言ってきた。


「……同じく」


 そしてローレはいつものように無表情ではあるが、その声には焦りの色が浮かんでいるように聞こえた。


「いいんじゃないの~? どうせ誰か選ぶんだし?」


「そうだな。俺たちがやるよりもよほどいいな」


 ただしミリーゼとべんけいは一切異論を述べなかった。

 二人には私が悪感情を感じ取れるということを伝えてあるため、もしも二人が何か悪巧みをしていてもすぐに私が気が付くだろうと考えているのだろう。


「発言をしてもいいか?」


 クライスが手を上げた。


「どうしました?」


「私としてもその意見にはいささか賛成しかねるのだが」


 どうやらクライスも反対のようだ。


「そうは言いましても、現状で適任なのは二人だけですよ?」

 

 私がこう言うと、クライスは「それはそうだが……」と困った表情でどうしたものかと悩み始めた。とはいえ、いくら悩んだところでこれは決定事項のため反対意見に聞く耳を持つ気はない。


「これは決定です。それに二人のことはそれなりに信頼してますよ?」


「なぜだ?」


 私のその回答が意外だったのか、クライスはそう尋ねてきた。


「それはガールズトークの結果です」


 そう言ってチラッとべんけいの方を見ると、ルナリアは少し赤くなった。


「……そうですか」


 クライスも自分でルナリアとべんけいをくっ付けて私たちとの繋がりを強化しようと考えている手前、私にこういう風な対応を取られるとは否とは言えないようだ。

 ただ残念なことにべんけいは気が付いていないようだった。


「それでは最後にミリーゼの方からお願いします」


「は~い。お姉さんの方はリジュを筆頭にいろいろ教えてるところ~。あとはエリスリーゼに頼まれた攻城戦兵器の開発や《花園》の改造なんかもそこそこ進んでるよ~。べんけいに頼まれた兵士用の装備はとっくに終わってるし」


 ミリーゼの方は《働く妖精(コロポックル)》が25体もいるため、他の所よりも作業スピードがかなり速い。

 そのためそれなりの余裕があるようだ。


「あ。ただ問題があったかな~」


「なんですか?」


「戦車はできたんだけどさ~、それを引っ張るモンスターがいないから、このままじゃ使えないよ?」


「……忘れてました」


 私は今、やってしまったという表情かおをしているに違いない。

 完全にそのことが頭から抜け落ちていた。


「どうしましょうか?」


 思わずべんけいとミリーゼに質問してしまった。


「お姉さん達には無理かな~」


「テイマーを探さないと無理だろ」


 ミリーゼとべんけいの言う通りで、戦車は馬では引くことができないため、どうしてもテイマーに頼んでモンスターをテイムしてもらう必要がある。


「そちらにテイマーはいらっしゃいませんか?」


 期待を込めてクライスとガルドに尋ねてみた。


「「……」」


 ただ、なぜかその質問に二人は沈黙してしまった。


「あの……非常に申し上げにくいのですが、テイマーとはどういった方なのでしょうか?」


 そんな二人に変わって、ルナリアがおずおずと手を上げて質問してきた。


「ひょっとしてテイマーはいないのでしょうか?」


「あちゃ~、その質問はお姉さんも予想外かな」


「よく考えたらNPCでテイマーとか見たことないな。プレイヤー職業限定だったのか?」


 べんけいの一言で私とミリーゼは固まってしまった、

 ここにきてまさかの真実に私達は本当に困ってしまったのだ。

 まさか折角作った戦車を引くモンスターが手に入らないとは予想だにしていなかった。


「あ~、テイマーっていうのはモンスターを手懐けて、言うことを聞かせる奴のことだ」


 そんな固まってしまった私たちに代わって、べんけいがテイマーについて説明を始めてくれた。

 ただ、その説明を聞いても誰一人として心当たりはないようだ。


「今からテイマーを育てるのは……」


「無理だな」


「そうだね~。お姉さんはテイマーの条件知らないし」


 育てるという案は一瞬で却下された。


「あの……」


 これまでミリーゼの隣で沈黙していたリジュがおずおずと手を上げる。


「どうしました?」


「ミリーゼ様やべんけい様の時みたいに呼べないのでしょうか?」


「ん~、チケットがね~」


「ええ」


 その手が使えるのなら、私もミリーゼも知り合いのテイマーを召喚するのだが、肝心のチケットを持っていないためできないのだ。


「……そういえば今さらだが、どうやって俺はここに呼ばれたんだ?」


「メール見てないの~? お姉さんはメール開いたらここに来たよ?」


「俺はINしてたら、いきなりここに来た」


 そう言えばべんけいは最後に召喚したため、私たちがどうやってプレイヤーをここに召喚んだのか説明していなかった。

 彼をここに召喚した時は、ここがどういった世界なのかを説明しただけだった。


「フレンドチケットです。あれを使うとフレンドリストから人を召喚できます」


「そうなのか?」


「はい。持ってますか?」


 あまり期待しないで聞いてみた。 

 フレンドチケットは持っていてもあまり使わないが、売却の値段が良いためすぐに売る人が多いので正直に言えば期待できなかった。


「2枚あるぞ」


「そうですか。やはり無い……あるのですか!?」


 予想外の回答に、思わず立ち上がってしまった。

 嬉しい誤算とでも言うべきか、どうやらまた古い仲間が増えるようだ。



 

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