逃亡したその後に
誤解がとけた、ちょっと後のお話となっています。
「ルーファス様、なぜわたしはミノムシ状態なのでしょう?」
わたしは、和解したあとすぐに聞きました。
イヤ、この格好以外ときついのですよ。シーツでぐるぐる巻き。
甘く蕩けるようなキスのあと………全くもって色気のない質問ですが、仕方ありません。
全身を拘束されているのですから。
「あぁ、すみません。今、もとに戻しますから」
そう言ってルーファス様が、シーツから出してくれますが、質問の答えにはなっていませんよっ!!
ちなみにコレ、手まで中にはいちゃってるんですよ。まさにぐるぐる巻き。
だから、抱きつくと言ってもほぼタックルしているに近い状態です。
自分では取れない仕様となっております。
暗器だって取り出せません、ハイ。
出ているのが頭だけなんて、びっくりな光景ですよ!なにかのオバケみたいです。
やっぱりミノムシ?
やっと手足が出現し、胴体もはっきり見えたところで「嫌がらせですか?」と尋ねてみようかなと思ったところ、先にルーファス様が口を開きました。
そのまま口をパクパクさせて、どうしようかと悩みましたがなにか?
引っ込みがききませんね、タイミングを間違えた気がします。イイエ、間違いましたね絶対。
「ファティマの無防備な姿を、メリルなんかに見せたくなかったのですよ」
「へ?」
「その………夜着姿でしょう?」
言われて気づきましたよ、わたし。
そういえば、薄い夜着一枚でした。
初夏といえど、もう薄着ですからね。白のハイウエストのワンピースタイプで、胸の下の青いベルベットのリボンできゅっとしぼるデザインのお気に入りの一品です。
この青いリボン、わたしの瞳の色と同じなんですよ。アイスブルーです。
「確かに、殿方の前に出てはいけない格好ですね」
人前では結うのが礼儀とされる髪も、流したままですし、自分にも相手にも毒ですね………。
自分の長い、藍色がかった黒髪を弄りながら答えます。
「そうでしょう?というか、私が見せたくありません。私だけの特権でしょう?ファティマのそのような姿をみることができるのは」
にっこり微笑んだルーファス様に、胸の奥がきゅんとなります。
惚れた弱味でしょうか? それとも、誤解がとけて両思いになったからでしょうか?
先程からルーファス様の姿や、言葉、さらには仕草までにもときめいてしまいます!!
心臓が今にも破裂しそうですか、なにか?
物凄く健康に悪い気がします。
今更ながらに、この現象から逃げたほうがいいような気もしてきました………。
イエイエ、わたしは逃げないと誓ったばかりなのですッ!
真っ赤になって、うつむいてしまいます。
アレ?何を今更ながらに照れているんでしょうか、わたしは!!
キスもしたし、今は夜着姿だって見られているんですよ!?
先程なんかは、ルーファス様とメリル様が薔薇でアレな関係だと勘違いして、色々言ったではありませんか!!
猛烈に恥ずかしくなってきました。
イヤ、ルーファス様は好きですけど。殺しちゃいたいくらい愛していますけどッ!!
アレ?これも口に出した気がします…………?
ぐるぐる悩みます。
「ファティマ?」
ルーファス様がよんでいますが、それどころではありませんっ!!
逃げないと誓ったわたしを心底消したいです。前言撤回ってアリですか?
なしですよね、ハイ。
こうなったら──────
わたし、気にしないことにします!
恥ずかしさや、その他モロモロを考えなければいいのですよ、わたしったらなぜ気づかなかったのでしょう?
それさえ封印してしまえば、愛されていると言うのはくすぐったく、幸せですし、愛していると言うのはとても熱く、胸を焦がします。
結局、好きなものは好きなんですから、羞恥心は無用ですね!?
「愛しています、ルーファス様。えぇ、殺しちゃいたいくらいに」
「私もです、ファティマ。だから…………私以外にはそんな格好や、可愛らしい表情は見せないで下さいね?」
「はい、勿論ですよ!!」
だから…………─────ルーファス様も、そんな笑顔は、他の女性…………たとえ女装したメリル様にでも見せないで下さいね?
そう囁きながら、わたしはルーファス様の唇に自身の唇を重ねました。
ミノムシな理由でしたー♪
ファティマの脳内は、いろいろぶっ飛んでます。
アレだけのことをしておいて、今更ながらに羞恥に悶える………………。
あぁゆう感じで、脳内でアレコレ繰り広げてーのいろいろ誤解して突っ走ります。
しかし、今回はピンクな乙女一色なので、害はないです。
傍迷惑なご令嬢なのです。
ちなみに独占欲は強いほう。けどいろいろ悩んで、悩んだ挙げ句に逃亡を選択します。
しかし、実際に対峙した場合は迷わず暗殺を選ぶこでもある………………(アレ?設定間違えた??)