ハジマリはじまり
異なる世界
此処では4つもの国が争う戦乱の真っ只中。
その内の一つにして四つの中でも軍事力が優れている“聖女帝”シャルルアン・ブラットニーが治める西の国『フランソア帝国』の首都パーリアにある、『パーリア騎士養成学校』。
この物語はそこで騎士として成長?する者達の波乱万丈?な日常を描いた物語。
フランソア帝国の首都パーリアより馬車で一日と遠い場所に牧場がある。『オルレア幻想牧場』といい、馬や牛は勿論、グリフォンやドラゴン・ペガサスといった幻想種も養っているデカイ牧場である。
「・・・うーん、もうお昼だね。」
ここで働いている老齢の女性アルーアは冒険に出た牧場主であるおしどり夫婦の代わりに幼い跡取りの子供を愛情を持って育てていた。そんな跡取りも今年で16になり、明後日から首都パーリアにある『パーリア騎士養成学校』に2年生として再び戻る為、準備をしなければならないというのに。
「昨日はしゃいで炎馬に乗って走り回っていたとはいえ寝すぎでは無いだろうかね。」
「いかがなさいましたか?アルーア殿。」
溜息をつくアルーアに声を掛けてのは口ひげを生やした男性、ヒュードラであった。モノクロやスーツを着れば執事に見えなくも無い渋い顔立ちをしているが、彼は竜族の変種体であり所々に竜の鱗がある。そして最大の特徴として服から飛び出ている尻尾の存在が彼を人有らざる者と立証しているのである。
因みに只今洗濯物を干し終わり、動物たちの餌やりに行く途中であった。
「あら、ヒュードラさん。坊ちゃん知りませんかね?」
「ジルド様ですか。そういえば、ジャンヌと共にペガサス厩舎に行ったっきり戻ってませんね。まぁ、厩舎で日向ぼっこでもしているのでしょう。餌やりついでに起こしに行ってきましょうか。」
「お願いねヒュードラさん。もうお昼ですし、それにあの子ったら明日ここを出ないといけないのに荷造りもしてないのよ。もー。」と腰に手を当てながらプリプリと怒るのであった。
「クク、畏まりました。では、昼食楽しみにしています。」
「えぇ、羊肉のステーキ特別に大きいのあげるわ。」
こうして、ヒュードラはこの牧場の跡取り息子を起こしに行くのであった。
そんな中、牧場の中にあるペガサス厩舎で積まれていた乾草に包まれながらぐーすか寝ている黒髪の青年と共に寝ている金髪の少女がいた。
この青年こそ、オルレア幻想牧場の跡取り息子であるジルド・オルレア。パーリア騎士養成学校において優秀な騎士を集めたAクラスの一員にして教官を困らせる4人組の一人でもある。
そして、その傍にいる金髪の女性はジャンヌといい、ヒュードラと一緒で人有らざる者であった。見た目は金色の髪がよく似合う美少女なのだが背中に小さな羽があり、それだけなら天使かと思えるが彼女にはポニーテール・・・翻訳通り馬の尻尾が生えていてる。言ってしまえばペガサスの変種体である。
ヒュードラとジャンヌと言った変種体はこの世界では滅多にいなく一万頭で一頭いるかいないかと希少価値な為、よく奴隷として売りに出されることが多く酷い時には魔道士の研究材料にされてしまう事もある。
ジルドにとってこの牧場は家であり、何れ継がなくてはならない大事なものであった。しかし、何故彼は騎士養生学校に通っているのか?
この世界には様々な騎士職があった。その数は十種類以上と多く存在する。一番最初に付く事が出来る見習い騎士。其処から派生する多くの騎士職に皆が憧れを抱いたのだ。
多くのものがなる代表的な騎士職として、剣騎士・槍騎士・弓騎士。貴族しかなることを許されない指揮騎士。魔道が使えるものしか出来ない魔道騎士。己の体と拳に絶対の自信が無ければ選べない拳騎士。最近北の国『ベーリン皇国』の鉄鋼技術の結晶とも言える『機銃』という高攻撃力の武器を携える機銃騎士。一時的だが精神を狂わせる事により力や技量を底上げする狂騎士。滅私奉公の精神に基づき汚い仕事も忠実にこなす影騎士などが存在する。
そして、彼が目指す騎士職にして、難易度は他の騎士職よりも高い職業と呼ばれる騎乗騎士。幻想獣に跨り戦場を駆ける勇姿は他の騎士職では真似は出来なく、しかし一般的な獣と訳が違う幻想獣を操れるのは極稀でしかない。
しかしジルドは違う。幼少の頃から幻想種と過ごしてきた彼にとって幻想種は人生で欠かせない存在、故に彼はこの職業を目指すのだ。記憶の中でおぼろげでしか覚えていない両親の顔を驚かせてやりたいが為に、彼は騎乗騎士になるのであった。
勿論、戦場で手柄を立てて王様に表彰される夢を見ているジルドと彼と共に空を飛ぶ夢を見ているジャンヌの脳天にヒュードラの愛が飛んだのは言うまでも無い。
初オリジナル。
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