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あかきキジンの章7

否・夢オチ

この日は、と言うより、しばらくはこの村に留まることにした。英雄の予言は胡散臭いが、信じられる何かがあった。宇宙人、キジン、キッピー。わけのわからないこと尽くしの1日を、この村の宿で終わりを迎える。当然、俺たちは文無しだが、英雄が言ってタダにしてくれた。疲れてはいたが、布団に入っても眠れるとは思っていなかったけど、気が付いたら眠りに落ちていた。キッピーは寝たか?今の俺には分からない。今日の出来事すべてが夢の中の出来事だったのかどうか、次に目を覚ました時にわかるだろう。そして答えは出た。

「・・・ちくしょう。全部現実かよ」

「あん?なんか言ったか?」キッピーはすでに準備を終えていた。昨日の夜のような緩さはない。でも、さすがに疲れていたようだ。すぐに眠ったらしい。そんな様子は微塵も見せなかったが。戦いが近いことを肌で感じているのかもしれない。俺にも感じている。それにしても、妙に静かだ。静かな朝は嫌いじゃないが、人の気配が全くない朝は不気味だ。いや、鳥のさえずりや生命の息吹のようなものすら感じない。外では何が起こっているんだ?

「何かがおかしいぞ、キッピー」

俺は気配を殺しながらゆっくりと身構えた。キッピーは相変わらず無形の位。ただ呼吸をするように立っている。隙が一切ない。・・・問題は俺だ。相変わらず力は出ない。このままだと足手まといになっちまう。不安がよぎったが、それをどうこうする余裕は与えてくれなかった。

突然、横の壁が吹き飛び、木カスが体を通り抜けて反対の壁に突き刺さる。目に入らぬように防ぐが未だキッピーは微動だにしない。ただ、首だけを空いた壁の向こうにいる者たちに向けて笑った。差し込む光とともに、人影が複数飛び込んできた。あの宇宙人かと思ったが体格が違うし、複数いるのは妙だ。一番初めに飛び込んできたやつの顔を確認する前に、その顔面の3/4がキッピーの拳に変わった途端、はるか後方に跳んでいき見えなくなったので確認はできなかった。ほかの奴らに目を向けると、宇宙人のような恰好をした村人たちにも見えるし、逆に言うと村人の格好をした宇宙人にも見える。どうなってるのかは分らないが、あの宇宙人が関係していることは確かだろう。そんなことを考えている間に、キッピーがほかの村人宇宙人たちを2~3人殴り飛ばしていた。こいつらの強さは初めに戦った宇宙船にいた雑魚宇宙人たちとほぼ変わらないようだ。あのときは俺でも倒せたが、今は倒せるのか?それに、こいつらを殺すのはまずい。気がする。キッピーもそれがわかっているようで多少は手加減しているようだ。殴り飛ばされた奴らはもう、ピクリとも動かないが。手加減している感はある。

空いた壁から宿を出る。キッピーが邪魔くさそうに後ろに下がれと手で俺を来させないように制する。

「ふざけるなよキッピー。何のつもりだ!!!」

村宇宙人どもが俺らの前に集まってきた。その数、ざっと数えて・・・やはり村人の人数だ。利用しやがった。許せん。

「今のお前は足手まといなんだよ、あかき。後ろで黙って見ていな」

さっとキッピーが消えた。同時に村宇宙人が3人、宙に浮いていた。その隙に、3人の村宇宙人が俺のほうに来た。足手まといは聞き捨てならないが、そう思うならちゃんと守れや。などと思っているうちに、その3人は俺の射程距離内に入っている。

「このやろう」

俺の力ない蹴りは誰にも当たらず空を切り、代わりに3人の村宇宙人の拳が俺の腹と顔面に突き刺さっていた。「う・・・うげ」絞り出された息が赤く染まった。シールドがあるのでダメージ自体は大したことはなかったが、無力感から「こ・・・殺されちまう」と弱音が口から出ていた。


ここまで読んでくれてる人はいるのか!?読んでくれたらありがとう。次もよろしく!

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