シミズの章
最終章
夜、あかきは家に帰った。あのあと、普通に友達と買い物をし、普通に家路にと着いた。家に帰ると、母親が慌てた様子で玄関に飛んできた。何事かと思う前に、母親が捲し立ててきた。
「あのコーンの缶詰はなんなのよ?山ほど家に届いたわよ。しかもあんた宛で、しかも、アメリカからよ?いつからアメリカ人にお友達ができたのよ?宛名読めないけど誰なの?なんでアメリカなのよ?なんでトウモロコシなのよ?教えなさい、雄大!!!食べていいものなの?ねえ、食べていいものなら食べるわよ、母さんは!!」
驚きよりも母親は、どうもコーンが食べたいらしい。怪しんでいる割には、簡単に食べようとする母親だ。が、それは出来ない相談だ。なんせ、そのコーンはあの農場主との友情の証であり、それに、このコーンを頼んだのはキッピーだ。俺の一存じゃ簡単にはあげられない。
それにしても、よく覚えていたな。あの農場主も。今は、あの農場主の息子が跡を継いでいるが、あかきがそんなこと知るはずもない。第一、あかきにも宛名が完璧には読めなかったし、そもそも、あの農場主の名前自体知らない。今頃になって気が付いたが、聞き忘れた。そんなあかきだが、会話できたことにはなんら疑問も抱いていないようで、それもアッシュの装置のおかげなのだがあかきには説明する必要もなさそうだ。
「母さん。食っちゃだめだよ。それ、俺宛に来たんでしょ。人の勝手に食べないでくれよ。マジで食べないでよ。マジで、マジだからな」
そう言われたので母親はふてくされたが、とにかく無視して自分の部屋に行った。
「ふー、なんかいろいろあったな今日は。・・・ん?誰だ!?」
部屋のドアを開けると、誰かがいる気配がした。恐る恐る部屋の明かりを付けた。付ける間も、その人影はまだ一言も話さない。なぜ黙っているんだ?単純に気のせいか?いろいろあったからなー。疲れているだけかも。まあ、なんにせよ、部屋の明かりをつけなきゃ何も見えない。部屋の明かりを付けると、本当に人が立っていたのであかきは驚いてしりもちをついてしまった。
「いてて、なんでそこにいるんだよ。キッピー?」
そう、ある程度予測済みだったが、立っていたのはキッピーだ。俺の部屋にある漫画を読んでいる。その本に夢中だから何も言わなかったらしい。今でも一言もしゃべらずに黙々と漫画を読み続けている。・・・つまり、あの暗闇の中で漫画を読み続けていたのか?明かりがついても気にならないのか?暗転だかなんだかは?キッピーは地下生活が長かったせいか、どんなに闇の中でも目が見えるらしい。しかし、それでも白黒の漫画を読めるとは・・・やはり、キッピーはただ者ではない。て、だから、感心している場合じゃないし、この間も一言もしゃべらないし。
しばらくほっといて、荷物を置いた。キッピーがいるところは、あかきの机の真ん前。そこには椅子もあるが、キッピーは立って読んでいるので椅子にも座れない。荷物も、机の上に置きたいのだが、なんつうか、その、邪魔だ。そもそもだ。そもそもなんでここにキッピーはいるんだよってぇの!?あかきも座らず、口を曲がらせ、キッピーを見ている。漫画を読みながら、かすかにキッピーが笑ったような気がした。って、そんなこと観察してるんじゃない。何しに来たのか言え!!!てか、なんか言えよ!!!
「お」
やっとキッピーがあかきに気が付いた。なんて言うんだ?なんでここにいるんだ?なんなんだ?まあ、慌てるな。キッピーが口を開けば謎が一気に解ける。じーと、あかきはキッピーの口元を見続けた。
「なんだよ?」
「それじゃないだろ、言うことは」
「ああ」
「ああ?」
「お帰り」
「ただいま。・・・て、ちゃうわー!なんでここにいるんだよ?どうやってここに来たんだよ」
「え?歩いてだけど?」
「そういうことじゃないだろ」
「え?」
「だから・・・」
「ああ」
「ああ?もうへんなこと言うなよ」
「おまえの母親にここで待ってろって言われたんだけど?」
あかきは後ろを睨み付けた。
「母さん。言ってくれよ、誰か来ているなら」
あかきは、ため息をつき、もう起ってしまったことに対し、もうごちゃごちゃ言うのをやめた。改めてキッピーを見る。
「で、本当に何しに来たのさ?・・・そういや、コーンが缶詰だけど届いたぞ。食べてもいいのか?」
それには、キッピーも驚かされた。あの農場主には、ほぼ、冗談で言ったのに本気にして送ってくるとは。
「食べるなよ。未来に持っていくから」
「あっそ。一応母さんには食うなって言ってあるから大丈夫だとは思うが。保障しないからな。て、いいから、何しに来たんだよ?もう戦いに行くのか?別にいいけど。少し寝かせてくれ。タイムスリップするんだから寝たって変わらないだろ?」
「お、そうだ。そうだ、忘れてた。マンガ読んでる場合じゃなかった!!あかき、お前に未来で会ったんだよ。そ、そしたらな」
「そ、そしたら?」
あかきはいろいろな想像をした。未来の俺?ど・・・どうなっているんだ?で・・・でも、未来は今・・・今っていうとおかしいが、未来はデスにぐちゃぐちゃにされたんだよな?お・・・俺も生きていたのかよ。
「そしたらな、お前。清水に出会っちまってたぞ」
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