デスの章12
言葉は・・・デス語だよ
チュカカブラは4匹になったが、その脅威は全く変わっていなかった。むしろ、扉が壊れ、簡単に入ってきてしまう。その部屋にいたデスたちがパニックを起こしてしまった。でたらめに武器を、やみくもに撃ちまくる。煙が舞い、視界がなくなっていく。チュカカブラには全く関係ない。それどころか、デスたちは仲間撃ちをしてしまい、悲鳴が上がる。しかも、誰が襲われ、悲鳴を上げているのかが全く分からない。
食いつかれたデスたちは、揃いも揃って、その食いついたチュカカブラに武器を突き付け、発砲した。恐怖のあまり、それが死に急ぐ行為だとも気が付かず。武器を突き付けられたことに気が付いたチュカカブラは慌てて舌を抜いて飛び退く。デスたちの動きはそんな反応できない。何もいなくなった、すなわち、自分で自分の体に向かって引き金を引いていた。
次々に息絶えていくデスたち。そのうちの1人のデスだけが、逃げ遅れたチュカカブラ1匹を道ずれにして死んでいった。この部屋にいたデスたち数十人が数秒で6人になってしまった。
ヒーローは当然残っている。しかし、打開策がまだ見つかっていない。もはや逃げ場はない。逃げ場がない?逃げ場?また仲間が一人殺された。まて、そうだ。少し待て。冷静になれ。ヒーローはこの状況下で、すさまじい能力を発揮した。それは当然キジン化など神がかったものではない。知恵のある生き物なら持つ、考える能力を持つ生き物ならどんな生物にでもある能力。
このヒーローは、ほかのデスたちと何ら変わらない。ただ、そう、ただ必死だった。死にたくないという思いが、死を上回ったのだ。脳が、恐ろしいほど動き出した。光の速度で過去の事柄を脳が読み返した。そして、予測。未来予測。すべてがどんなスピードをも上回る速度で計算し始めた。そこに、落ちていた。一つの可能性が落っこちていた。ワレワレが逃げるのではなく、奴らを閉じ込めればいいのだ。
チュカカブラは扉を開けられない。壊そうと思えばきっと壊せるのだろう。しかし、奴らはそれをやろうとはしなかった。理由は分からない。もしかしたら、扉も壁も区別がつかなく、行き止まりだと思っているからかもしれない。行き先のないところにはいかない。利口なのかバカなのかわからない。分からないが、もう方法はこれしかない。
「奴らを部屋に閉じ込めるんだ」
ヒーローがボソとそう言った。ヒーローたちはすでに3人にまで減っていた。また別の部屋の中に身を潜めていた。ここにも食料はなかった。3人が3人、限界だった。
「どこに?どうやってやるんだ?」
イラつきを隠さずに聞き返す。もう1人は黙って聞いていた。もうどうでもよくなっていたのだ。
「俺がおとりになる。だから、俺が部屋に入ったら、そこの扉は閉めてくれ。そうすれば、奴らを閉じ込められる」
イラついていたデスも耳を疑った。おとりなんてなったら間違いなく死ぬ。分かっているのか?・・・なんて言ったって意味もない。分かってて言っているのだから。
「でも、どうやるんだよ?」
同じことをまた聞いた。ヒーローは、何も答えず、武器を空いた腕に押し当て、撃ち抜いた。血がはじけ飛ぶ。あきらめていたデスの顔に血がかかり、その顔がゆがんだ。チュカカブラを観察していてわかったこと。誰が見ても分かることだが。奴らは、血に反応する。血の匂いに反応するのだ。
「これで、奴らを一か所に集められる」
2人のデスが呆気に取られていた。ヒーローが残った腕でその2人の顔を思いっきりひっぱたいた。手加減なんてできる余裕がなかった。
「もう、時間が・・・ない。俺にも・・・時間がないし、奴らがもう・・・ここの場所に来る。・・・扉の前に来られたらもう・・・アウトだ」
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