デスの章4
カオスな時間
「そういえば総長」
「なんだ?」
「何やら情報によると、ワレワレの船は人類にいくらか見られているようですよ」
「本当か?人類というやつは、それでどんな反応をしているのだ?」
二人して首をかしげる。反応が気になるが、誰に聞けばいいんだ?それはひとつしかないだろう。人類に聞けばいいのだ。でもどうやって?考えた結果、誘拐と言うと聞こえは悪いが、誘拐して直接聞けばいいのだ。そのあとちょっといじって、記憶を消せばいい。そうすれば、宇宙人に誘拐されたなんて言い出す地球人はいないだろう。
それからすぐに実際に聞いてみた。誘拐したのは取り敢えず、いろいろな歳の人類の男女。
「ワレワレを見てどう思う?」
初めに聞いたのは20代の若い(らしい)女。人類には男と女がいるらしい。デスたちには特に男と女の概念はない。一人でも二人でも何人でも子孫を増やすことができる。補ったり、クローンを作って未来につなげたり、色々だ。要は完璧さの追求だ。寿命が近づくころに、自ら判断して残す。体そのものから同じ形に近いものが生まれる。人間は、と言うか、地球上の生き物はそうじゃないらしい。この女にいろいろ聞いたがどうもよくわからない。詳しくしてみろと言うと、何やら嫌がり、その上一人じゃできないと言うので、ワレワレが手伝ってみたが、さっぱり意味が分からない。
でも、地球上の生き物にとっては必要のことだし、人間に至っては、気持ちいいことらしい。かなりどうでもいいし、話が脱線してしまった。聞きたいことはワレワレのことだ。この女はかなりズバッと言ってきた。
「なんなのあんたら?まるで宇宙人みたいないい方ね」
「そうだ。お前たちにとってはそう言うのが一番いいだろうな」
すると女は目を輝かせて質問してきた。それはあまりにも思った通りのことなので略させてもらう。というか、こっちが質問されることはお門違いも甚だしい。こっちが聞いているのだ。人間の女っていうのは、ワレワレと似て、好奇心に溢れているようで、妙な親近感がわく。でも、ワレワレは質問する相手を間違ったらしい。
次はこの女と同世代の20代の男。
「お前はワレワレを見てどう思う」の質問に男は理屈っぽくいう。
「お前は?まるでほかにも聞いたことのあるような言い方だな。お前らは何者なんだこら!?」
「ずいぶん乱暴な言い方だね。ワレワレを見てもどうも思わないのかな?たとえば、怖いとか」
そう聞くと、男は突然怒り出した。なんかめんどくさい。こいつめんどくさい。帰ってもらおう。帰る際に、頭をいじって記憶を消しといたが、ついでにその怒りっぽい性格も直しといた。すぐに怒る性格は鳴りを潜め、しゅんとなったようで、何しゃべらなくなった。ワレワレはとても良いことをしたと気分がよくなった。もう二度と、この男が感情を表に出すことはないだろう。ワレワレはよいことをした。
続いて60代の男。ワレワレにとってはかなり年を取った人だ。なんせ、前に言ったがワレワレは30歳ぐらいで死ぬ。2倍も生きるのだ。何を楽しみに生きているのだろうか?ワレワレの興味はそっちに行ってしまった。
「あなたは何を目的(楽しみ)に生きてるのですか?」
「若いころにやり残したことをするために生きている」
「それはなんですか?」
「旅をしたり、若い女の子と遊んだり」
その男の話を聞いて、ワレワレはさっきの女を思い出した。なんなら紹介してみようか?興味がある。だから、紹介してみた。女は嫌がっている。なんなんだ?この女の意味が分からない。気持ちいいことをすればいいじゃないか?60の男はもうその気らしい。聞いた通りじゃないか。でも女は嫌がっている。なんか変な空気になってしまった。ワレワレのせいか?とりあえず・・・2人の記憶をもう一度消しておこう。それがいい。なんかいいことを・・・したということにしておこうかな。
「総長」
「なんだ?」
「話がまた脱線しています。戻してください。話を」
40代の男。逆にいろいろワレワレに質問してきた。大体女と内容は一緒だ。ただ、この男は妙に奇妙だった。妙にワレワレのことを詳しかった。ワレワレのことをみんなに話したいと言うので承諾した。記憶は消さなかった。でも、未来の地球を侵略したことは言わないでと言っておいた。言ったらこの星壊すとも脅しておいた。信じるように砂漠と呼ばれる場所を攻撃した。男はしょんべんを漏らしながら、それでも感動している素振りで、「わかった」とだけ言った。男はそののち映画などいろいろなメディアでワレワレのことを話した。さすがにワレワレとツーショットで撮った記念写真は誰にも見せていないらしい。いいのに。それは後悔してもいいのにと言ったのに。
あのー、誰かまともにワレワレの質問に答えてください。でも、人類とは面白いな。好奇心の塊だ。ワレワレの星の奴とは違う。どんな状況でも楽しんでるようにも見える(本気で怖がっていた者もいるが)。そうこうしていると、やっとワレワレの質問に答えてくれるものが現れた。
「お前はワレワレを見てどう思う?」
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