デスの章3
特殊能力
デスたちの星に住むほかの生き物は1種類だけ。ウシのような生き物だ。さっき言ったようにデスたちはその生き物を食べない。デスたちは草食系だから。反対に、ウシもどきもデスたちを食べない。それは、こちらも草食系だから。だから、肉食の人類がデスたちにとってよっぽど不思議なのだ。しかも、動物やほかの種族が山ほどいる地球。壊すより、観察するほうがよっぽどいい。よっぽど面白い。未来を離れ、過去に行ったことはこのデスたちにとって、やっぱり正解だったと言える。
でもますます地球のことが分からなくなってきたようだ。歴史や文化を見れば見るほど、なぜこいつらは自分で自分の首を絞めるようなことをしているのだろうか?と思ってしまう。むしろ、侵略なんてするよりも助言をしてあげたい。これは本音だ。でも、デスたちにそんな余裕はないし、当然そんな物好きな考え方のデスは希だ。
「ほかの仲間たちは何をしてるんですかねー?」
とくに興味はなかったことだが、いかんせん暇だから。適当な話だ。自分たちも何してんだかって感じだ。ほかの奴らは、勝手にこの星を侵略でも何でもしているのだろう。もしくは自分たちのように適当に地球観察でもしているのだろうか?過去からはこの星が侵略されているような様子がない。なぜなら、人類も動物もそのままの生活をしている。気が付いていないだけで、どこかが変化しているのかもしれないが。
この時は、全くと言っていいほど、地球から自分たちに抵抗する勢力がいるなんて思ってもいなかった。分かるわけがない。地球人にこの宇宙船に攻撃を仕掛ける武力も何もないのは知ってる。まあ、未来の地球は完全に侵略してるのだから。だから、過去に行って歴史を変えようとしていた仲間のデスが、あかきとキッピーに阻止されたなんて想像すらできなかっただろう。
そんな自分勝手なデスたちでも、たまには仲間や故郷も恋しくなる。意味もなく、痕跡を残した。デスの移動した場所には、わざとミステリーサークルができていた。ある日、違う場所にもできていたので、もしかしたら・・・と思ったら、人間がやっていたことと知り、ため息が出た。それでもいろいろなミステリーサークルが出てきたので取り敢えず全部調べてみたが仲間の痕跡は一つとしてなかった。同じ時代に仲間がいること自体が奇跡なのはわかっている。そう、分っている。
「自分たちの星がなつかしいですねー」
「まあなー」
「今もなお、戦い続けているのですかなーーー」
「勝てると思っているのならそうだろう。ワレワレとは全く別の考え方を持っているからなー。でも、勝てない。もう勝てないことはわかっているけど戦う。むなしくても未来を変えるために戦う。この星の連中もそうなのかもしれない。勝てないとわかっていても、もしかしたら挑んでくるのかもしれない。ま、そんなことされてもたまったものじゃないし、ワレワレは戦い好きではない。なら、安全なところでこの地球の生命を見守る。それが面白いではないか」
「総長」
「なんだ?」
改まってかしこまるデスに総長は尋ねた。
「1度はワレワレも地上に降りてみて、人類および、地球の生き物たちと接触してみたいものですねー」
総長も静かにうなずく。別に共存するわけではないが、理解してほしい思いもあるのだ。こんなデスたちにも、理解されたいと思う感情はある。それは感情という特殊を得たものの宿命だ。しかし、「それはできない」と総長は言う。当たり前だ。未来で自分たちは地球人を侵略しているのだ。それが嫌だからここにいると説明したところで、地球の生き物たちにとっては「ふざけんなっ」て、思われるだけだろう。当たり前だ。キッピーこそアッシュと意思の疎通をはかれたが、キッピーがかなり特殊なのだ。
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