キジンとデス・イーターの章20
トウモロコシが食べたい
こうして、3人のトウモロコシの収穫が始まった。とはいえ、その範囲はミステリーサークルを作るために倒した畑の部分だけ。3人でやれば大した量じゃない。3人仲良く、並んで収穫する。ばらばらのところから始めた方が効率がいいような気もするが、キッピーがあかきに聞きたいことがあった。
「新たなキジン、気神はどんな力を使うんだ?」
「あ・・・ああ。気神の力は、空気を使う力だ。空気を操る。っていうか雲を発生させたりすることができる。あのときは、部屋というある種の密室だったから、そこに雲を大量に発生させて、稲妻を発生させることができたけど、あまりもう使いたくないな」
「なんでだ?」
しんごがトウモロコシを収穫するのが一番早かった。今のところは。キッピーがものすごい勢いでしんごを追い上げていく。そりゃそうだ。しんごもあかきも力はないのだから。でも、あかきも徐々にしんごに追いついていく。しんごの問いに答えた時には、もう隣まで来ていた。
「しんごも分かってると思うけど、あの稲妻は俺がコントロールしたわけじゃないんだ。きっかけがあの結果をもたらした。無差別だしね。それに、あれほどの雲を発生させられるのは密室じゃなきゃ無理だ。その前に気神の力が尽きちゃうよ。だから、あの力はあまり使えないし、使えても目くらましぐらいにしかならないよ」
そういうことか。キッピーは黙ってうなずき、どんどんとトウモロコシを収穫していく。
「しんごも」
「ん?何か言ったか?」
あかきもしんごに聞きたいことがあったが、2人の距離はもうかなり遠くなっていた。あかきもかなり早い。しんごに、こいつ、鬼神化してないよな?と思わせるほどにだ。当然、こんなところで鬼神化などしていない。する力はもう残っていない。ただ単に、あかきは器用だっただけ。
「しんごはさー!!!なんであのタイミングで宇宙船に来てたの!!!!」
「ああー!!その事か!!!あれはな!!!なんとなくだ!!」
「はあー??そんだけ!?!?」
なんだそりゃ?と思いつつも、しんごらしいとあかきは笑った。しんごも、見えるか見えないかのところで笑った。キッピーももちろん聞いていた。そして、声も出さずに笑った。
しんごがかなり遅れたが、トウモロコシの収穫も無事終わった。本当にミステリーサークルのところだけを収穫したので、より一層、『俺の名はしんご』が際立って読める。しんごは恥ずかしそうだが、どうせ誰にも見えてないからいいかと思っていた。
「しんごってのは誰のことだい?」
と不意にトウモロコシ畑の農場主が、3人分の飲み物を持ってきながら聞いてきた。
「読めてるし!!!俺だし!!!」
もうどうでもよかったし、農場主は「やっぱりな」と高笑いをあげていた。しんごは遠慮もせずに、貰った飲み物を一気に飲み干すと、農場主が「いい飲みっぷりだな、しんごーーー」と言い、大声で笑っていた。なぜか上機嫌の農場主は上機嫌だ。まあ、あかきもキッピーも全く遠慮はしていないが。しかし、そのあとの農場主の言葉に3人が3人とも驚かされた。青天の霹靂だ。
「お前らは、なにかを成し遂げてきたようだしな。分かるぞ。おいらは、お前たちが何をしたのかまでは分からない。でも、ありがとうと言いたい。言っちまったがな。これからもし、おいらの助けが必要なら言ってくれ。お前らの力になる。今の仕事を見ても、お前らは信じられる。なんでも言ってくれ」
3人とも思った。このおやじ、ただ者じゃない。そして、伝わっていた。理解されていた。あかきは思わず泣いていた。しんごも、泣きはしないまでも感動していた。キッピーはまあ感動したが冷静だった。
「じゃあ、30年後に必ずトウモロコシの缶詰をこの住所(あかきの家)に送ってほしい。大量に。それまで、ここを守ってくれればいいよ」
農場主はうれしそうに高笑いをした。農場主の奥さんが飯を持ってきてくれた。
「そんなことなら一向に構わないぞ。じゃあ、飯でも食って行ってくれ。おいらはまだ仕事が残ってるから」
言われる前に、もう3人は食っていた。奥さんも笑っている。農場主はどこかに消え、奥さんも「食器はここに置いといてね」と言い、離れていった。
「うまいな」
もうほとんど食った時、農場主がでかい音とともに3人の目の前に現れた。刈り取り機に乗って。
「それ持ってんのかい!!」
3人が声を揃えてしまった。それにしてもその刈り取り機は早いね。飯をもうほとんど食べ終わっていたが、食べ終わった時には『俺の名はしんご』の文字の半分まで終わっていた。「はやっっ!!!」
読んでくれてありがとう。次もよろしく!!




