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あかきキジンの章4

かおす!

キッピーが吐き捨てるように絶望的なことを言った。そして俺の名前を叫んだ。

「あかき!!!こっちに来られるか????」

二人の距離はわずか5メートル足らず。しかし、その距離をこの体力、状態で無事にたどり着くことができるのだろうか?そう、5メートルとはいえ、あの男の妨害を躱してというと、難しい。そんな不安が顔に出ていたようでキッピーが一瞬嫌な顔をしたが、すぐに自信満々のような笑みを浮かべ、うなずいた。あの男が見てきた。同時に俺ら二人を。俺はとにかく全力で跳んだ。キッピーもほぼ同時に跳んでいた。あの男も、もう目の前に来ていた。「今だ!!!」キッピーが今までにないほどに決死の声を上げる。そして俺の手と、なんと男の腕も掴んでいた。あの冷たい感覚がまた俺の腕に伝わった。光が、三度、俺たちの体を包んだ。景色が光とともに消えていく。消えて、また広がっていった。

「!!!!!?????」

土の地面に押しつぶされるように転がった体が妙に重かった。目は、まばたきだってしていない。一度だって目を瞑っちゃいない。なのに気が付いたら俺は地面にひれ伏している。何が起こったのかもさっぱりわからないが、聞き覚えのある声が俺の耳を貫いた。

「はあーーーーーはっはっはっはああああああああああああ!!!!」

見上げると、そこには高笑いをするキッピーが、あの男の体を素手で貫き、天高々に持ち上げている姿があった。これまた愉快だが、いったい何が起こっている???さっきまで、ほんの数瞬前まで手も足も出なかった男に、いったいどうやって?

「気が付いたか、あかき?初めてのタイムワープの気分はどうだ?最悪な気分だろ?はーーーはっはっはーーー」

変なテンションになっているが、キッピーは最高に楽しそうだ。その油断を男は見逃さなかった。串刺された腕を掴み、思いっきり引き抜いた。ついでにその腕を折ろうとしていたが、キッピーの腕はまるで鋼のようで、びくともしなかった。だが、逃げることには成功した。つまりは、逃げられてしまったのだ。油断なんかするなよ。

「なにしてんだよキッピー!!」

男の姿はもうない。動きだけは信じられないほど素早い。それに引き替え、俺の動きはすこぶる悪い。体がまるで重みになってしまったような。やっとの思いで立ち上がったが、やはり動きがままならない。どうなっているんだ?そもそもここはどこなんだ?何をしたんだキッピーは?そのキッピーがゆっくりと近づいてくる。いろいろ話してもらうぞ。キッピーが冷たい手を差し伸べてきたので掴んだ。握手?

「体が重いだろ」

得意げに言うが原因を言えよ。知ってんだろ。わかってるよ、とでも言いたげなキッピーが説明を始めた。

「まず、ここはどこなのかから話そうか」もったいぶった言い方だ。しかも出た言葉は「過去だ」

「か・・・過去?」過去のどこだっての。どこでもいいわ。

「過去のどこだかは、今はどうでもいい」知らないだけだろ。「俺らのタイムマシーンはひとつだけ欠点があるんだが。それが今回は役に立ったといったところだな」もったいぶりすぎだろ。こいつ。

「で?」早く言えよ。とその一言に込めてみた。

「やつらのタイムマシーンは、帰る必要がないからいいんだが。俺らには帰る場所がある。むしろ救わなくちゃならないのは未来だ。未来にいる奴らを撲滅するのが本来の目的だ。なので過去に行くときに自分の名残を置いていかなければ戻れない。それはなんだっていいんだが、俺の場合は力。見えないものだが、現代にその名残を置いてきたのだ。だから俺は敵の動きを捕らえることができたし、あかきは体が重くなってしまったんだ。あの男の動きがあれほど早いとは思わなかったから逃がしてしまったがな」

なーに、すぐに見つけて殺すさ。キッピーはそんな表情を浮かべて笑うが、それならなぜ?


読んでくれたらありがとう。次もよろしく!!

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