キジンとデス・イーターの章13
対談中・・・異変
「そういえば、さっきのはなんなんだ?」
疲労の色がキッピーの顔に浮かぶも、余裕を見せている。あかきも同じだった。かなり体力は削がれていた。しかし進む。進まないわけにはいかない。
「なんのこと?」
逆にあかきがキッピーに尋ねた。大体の見当はついていたが、一応聞いてみた。キッピーはきれそうな息を何とか繋いで、言葉を足した。
「キジンのことだよ。鬼神化しながら奇神の力を使っていただろ?あれは一体どういうことなんだ?」
やっぱりそのことか。あかきは少し得意げになりながら説明する。
「鬼神だけじゃ、正直、あのノミと戦っても勝てなかったと思う。奴らの動きはとてつもなく速かったし、鬼神化もある程度使えば、鬼神の力も尽きちゃうからね。だから、俺は試してみたんだ。あいつらは思いっきりノミみたいなやつらだったから、火には弱いと思った。なら、奇神のほうが有効かとも思っていたし。でも、奇神じゃスピードでまったく追いつけない。スピードを残したまま戦う方法、鬼神化したまま奇神化できないかと考えたんだ」
「なるほど」と言いながらも、キッピーはこれは言葉で聞いてるとかなりややこしいな。と思っていた。相槌は打つが。あかきは続ける。
「それで、やってみたんだ。火を使うのは腕だけでも十分だと気が付いたから、やってみた。左腕だけの奇神化。そしたら簡単にできた。あのとき、俺は初めてキジンたちと一心同体になれたんだと思う」
「なるほどなるほど」キッピーは自分で言うのもなんだが、やはりあかきは変わってると思った。力が、漲っていく。あかきがいれば、デスどもを全滅させることも簡単に思えてくる。俺一人でもできたとも思っている。けど、あかきに出会ったことはそれこそ偶然じゃない。あー、まずいな。デスのにおいが近づいてきた。やばい。何も考えられなくなってきた。
キッピーは、ただ一点、前だけを見て走る。それまではあかきのスピードに合わせていたというのに、その距離はどんどん離れていく。あかきが不思議がりつつも、「どうした?」と聞く前に、デスたちのいる操縦室の前まで来ていた。
「ここか?」
とキッピーに聞くも返ってこない。無音。様子が明らかにおかしい。なんなんだ?急に感じ悪くなったぞ、こいつ?キッピーは目の前の扉を見つめたまま動かない。キッピーじゃないみたいだ。誰だ?容姿はキッピーなのに、馬鹿みたいに青い服を着て(本人はコスプレと言っていたが)本当にバカみたいなやつのはずなのに。本当にこいつは誰なんだ?
「いいのか、こ・こ・で?」
もう一度訪ねてみると一応、うなずいてはくれるも、本当に聞いてんのかどうか疑問だった。一体どうしたんだ?扉を、キッピーがゆっくりと開けた。そこはあかきが初めに戦った宇宙船と造りは一緒だった。でも、そこにはあの人型宇宙人も、大型宇宙人の姿はなく(当然ちゃー当然だが)、代わりに自分たちと同じぐらいの背丈の宇宙人が2人、こっちを見て立っていた。その後ろには大きなモニターがあり、地上と、宇宙船の内部が映し出されていた。どうやら見ていたようだ。ほかにデスはいないのか?この2人のデスからはなぜか殺気を全く感じられない。一体どういうことだ?
キッピーを見てみた。キッピーはただゆらゆらしている。こいつもなんなんだ?幽霊にでも取りつかれたように、生気を失っている。なんだ、この状況は?どうしよう?困った。マジに困ったぞ。なんか言おうかな?
「お、おい!」
やべー。噛んだし。はず。しどろもどろしていると、デスが口火を切った。その口ぶりは、とても敵のようには思えなかった。味方、仲間とも思えなかったが。
「まずはじめに、あのチュカカブラたちを退治してくれてありがとう。あれにはワレワレも手を焼いているところでした」
特に、本当はこれといってチュカカブラに手を焼いていることはなかったのだが、いきなり、あの謎の力で斬りかかられては敵わないので社交辞令的な感じで言ってみただけだ。それが予想以上に効果覿面だった。特にあの変身する方、完全に警戒心を解いている。単純だ。でも、もう一人の男は今のところ無反応。不気味だ。
「それで、あんたらは2人なの?ほかに仲間とかはいないのか?」
変身が聞いてきた。ワレワレ2人以外は今、一応この船の中に入るが隠れている。ワレワレのクルーはみな臆病者なのだ。そのことをその2人にそのまま説明すると、はははと変身のほうは苦笑いを浮かべるも、不気味のほうは相変わらず無反応。表情も分からない。
「俺たちは、この宇宙船を奪いに来たんだ。お前たちは、この星を侵略しに来たんだろ?抵抗してもいいけど、こっちも本気だからな」と変身が言う。
「ええ、それは分かっています。ですから、ワレワレは降伏いたします。あなた方と戦っても勝ち目はありませんし。ワレワレを助けてほしいという気持ちはありますが、侵略しに来たことまで知っているのでしたら、殺されてしまっても仕方ありません。ですから、ワレワレはあなた方の言うとおりにいたします」
これは本当に効果的だったようで、変身がかなり困った感じになっている。無抵抗な者は斬らないでくれるらしい。でも、突然、不気味のほうが口を開けた。黙っていたのに突然に。全員の体がびくっと反応してしまった。その不気味の仲間の変身ですらも、突然の仲間の行動にびっくりしている。
「ごちゃごちゃとうるせーんだよ、デスが!お前らは全員ぶっ殺す。そのために俺はいるんだよ!!」
キッピーはもう限界だった。頭の中では、がんがんがんがんと何かがひたすら暴れ回っている。幻覚は見えないし、幻聴なども現れない。見えるのはデスの肉。あの肉にかみつき、頬張り、吟味したい。考えただけで、全身の血が躍動していく。同時に、それ以外はもう何も考えられなくなっていた。頭の中が痒いんだ。痒くて痒くて仕方がないんだ。
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