キジンとデス・イーターの章12
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俺は、走り出していた。俺たち2人同時にだ。初めとは違い、同じ方向に。1匹目のチュカカブラは、この俺たちの動きについていけず、何もできずに動けずに、あかきの刀の前に斬り飛ばされて死んだ。2匹目は、1匹目と同時にキッピーに捕捉され、逃げようとしたところ、それ以上の動きでその自慢の足をキッピーに掴まれ、そのまま首を折られて死んでいった。
残りの2匹は破れかぶれに、ただあかきとキッピーに突っ込んでいき、死んでいった。3匹目はなんとかあかきの背後を取り、自慢の舌を頭に突き刺そうとしたが、難なくあかきに躱され、頭を掴まれた3匹目は、そのまま燃やされ、炎に包まれ焼け死んでいった。4匹目もあかきに殺された。ちょうど真上にいたため、燃えた3匹目の炎に炙られ地面に落っこち、首を串刺しにされて息絶えた。
5匹目はというと、完全に戦意を喪失し、出口まで逃げるも、もともとこいつらには扉を開ける技術はなく、だからここに閉じ込められていたわけで、それすらも忘れて焦っていた。
キッピーは静かに、物音ひとつ立てずに最後の1匹に近づく。もう戦う理由もない。殺す理由もない。だが、キッピーは、この最後の1匹も殺した。それは、この戦いから逃げようとする最後のチュカカブラに対する怒りだ。結果はどうであれ、戦うことになってしまったのだ。どちらかが死、どちらかが生きる戦いだったし、チュカカブラも仲間が死んでいっても戦い続けたのだ。それなのに、最後の1匹になったからといって逃げるのは卑怯だ。だから、最後まで全力で戦い、倒した。
「どうしますか、総長?もうやつらはあのチュカカブラどもを倒してしまいましたよ。ここに来ることは時間の問題です」
デスの一人が、操縦室でもう一人の総長と呼ばれるデスに不安げに話しかけている。当然の不安だ。今まさに自分たちを全滅させかねなかった奴らを、いとも簡単に倒してのけたやつらがここに来る。しかも、明らかに標的は自分たちだ。そんなに恐ろしいことはないだろう。しかし、総長と呼ばれるデスの反応は違っていた。
「ここに来るのを待とう。今さら慌てるぐらいなら、あの部屋でチュカカブラと戦っている間にあの部屋ごと爆破でもしたわ。でもワレワレはそれをしなかった。しなかったのだろ」
「確かにしませんでしたけど・・・」
「なら、ジタバタするのはやめよう。答え、結果はやつらが来たら分かるだろう。それに、やつらはしんごの仲間(だと思われる)なのだから、もしかしたら話ができるかもしれない」
このデスたちは、あかきとキッピーが乗り込んでくる前にしんごと話をしている。そのしんごは今、あのトウモロコシ畑のおっさんと話をしていた。というか、トウモロコシ畑にミステリーサークルを作ったことで怒られ、謝っているところだった。収穫も手伝わされているが嫌な顔もせず、頑張っていた。
「人間がどうやってワレワレのことを知ったのか、知っているのか気になる。一か八か話し合ってみよう」
総長と呼ばれるデスが、諭すようにもう一人のデスに言い放った。
「そうですね。どのみち、ワレワレが生き残る方法はそれしかなさそうですから」
下手に、今さら地上を攻撃するだとか、余計なことをすれば、ある程度の屈辱感や喪失感を奴らに与えられるだろう。しかし、それでは間違いなくワレワレは死ぬ。生き残る方法は示談しかない。もうそれしかない。戦い自体、もうしたくはなかった。無意味な破壊は、もうしたくはなかった。
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