キジンとデス・イーターの章11
生きたいです
言葉が伝わるはずもない。さっきからそう言いたいキッピーだが、この緊張感に水差すのもなんだからただ黙っていた。簡単に殺しているように見えるかもしれないが、思ってる以上に命がけだし。しかも、言葉が通じたのか、またチュカカブラがざわめき始めた。あかきが左手の上に小さい炎を燃やし、威嚇しているためかも知れない。段々と、チュカカブラたちが恐怖し始めている。あかきは、キジンの影響かどこか喜んでいるようだ。すべてがおかしくなってきていた。この様子は、デスたちも見ている。それはあかきやキッピーは知らないが。
デスたちは、あかきとキッピーの様子を見て複雑な気分になっていた。あれほど手を焼いたチュカカブラを退治してもらっているのはいいが、全滅させたらここに来るだろう。当然だ。ならば、あの部屋にいる間に、チュカカブラもろとも殺してしまおうか?今がそのチャンスだ。また1匹、また1匹とチュカカブラが死んでいく。確実に、ここまで来たら勝てない。でも、どうするかの判断をしかねていた。あの生命力。あのチュカカブラをも凌駕する戦闘力。殺すのは惜しいというより、惹かれる何かがあった。違う生命を、簡単に殺し、侵すことは果たしていいことか?それもわからないことだし。なので、まだ様子を見ることにした。結果、どうなろうとも。そしてまた1匹、チュカカブラは死んでいく。残り5匹。
「キッピー、あのノミたちはあとどのくらいいるかわかるか?数も減ってきたし、キッピーの嗅覚ならもう数が分かるんじゃない?」
「よく気が付いたじゃねーか、俺の嗅覚に。・・・あと4・・・か5匹ってところかな?それ以上はもういなそうだ」
「そっか。結構倒していたらしいな」
あえて、殺したとは言わなかった。今更だが言えなかった。鬼神に力を借りているとはいえ、心までは借りるつもりはなかったし、俺は俺だ。あかき雄大だ!この戦いを終わらせてやる。こんな、無意味で訳わかんない戦いは、俺が終わらせてやる。・・・あの時のように涙が溢れてきた。俺は人間だ!人間なんだよ!!と声にならない声が口から外に放たれた。でも、声にならなくとも、それが通じるものがいた。キッピーはあかきの口の動きで何を叫びたかったのかが分かった。
じゃあ、俺はなんだ?と、キッピーは自分に問う。体の半分が機械で、しかも何も考えずに殺してきた。未来のためと言いつつも、ただのジャンキー。禁断症状から逃れるためだけにデスを殺してきた。それを宿命だなんてかっこつけながら、いくつもの命を食って、殺してきた。
「行こうぜ、生きるために」
キッピーの口の動きは違っていた。ごめんな。誰に言うでもなく、そう動いていたが、空気の振動では「行こうぜ、生きるために」と確かに聞こえていた。腹話術だ。あかきも、キッピーの口の動きには気が付いていたが、あえて黙ってうなずいた。
「ああ行こう。生きよう」
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