キジンとデス・イーターの章9
いかれ!!
あかきは、間抜けにもキッピーを探していた。あまり、奇神の力を使いたくなかったが、奇神の力を抑える方法は思いついていた。しかし、効果はまだわからない。なんせ初めてのことなので。とにかく今は、キッピーを探さなくてはいけない。こいつらは強い。いくらキッピーでも、このまま戦えば、間違いなく死ぬ。それだけは、当たり前だがそれだけはまずい。
「どこにいるんだ?キッピーは」
目の前に落ちてきたチュカカブラ1匹を、あっけなく殺して、あかきは前に進むことにした。
キッピーは、あかきの心配通りに苦戦を強いられていた。2匹・・・3匹と、殺す間もなくどんどん集まってきている。あまりに速いので、一度避けるとかなりの間が開くのでいいのだが、なかなか避けきれず、運よくそれが防げても、その衝撃で頭が飛びそうになってしまう。シールドも壊れそうだ。そうは言っても、今ので5匹ほど殺している。3匹目あたりからは、「こいつ、道連れにしてやろうか」と思いながら無理やり皮を剥ぐように頭をもいでいく。
キッピーのダメージは左の鎖骨が砕かれ、顔面も骨がへこんでいる。鼻は当然折れているし、脇腹も傷め、血が口から流れているが、それは単に口の中が切れているのか、内臓から溢れ出ているのかもわからない。そういえば、歯も、いくらかさっき飲み込んでしまった。
「今の顔、きっとやばいぞ」
血まみれの顔で笑みを浮かべていると、きっとこの顔もやばいと思い、さらに笑えてくる。こんなにピンチなのに?そうか、キッピーは気が付いた。もうじき俺は死ぬのか。さらに、さらに笑いがこみあげてくる。体全体が燃えるように痛い。痛すぎて生のことしか考えられなかった。けど、だからこそ、俺はもうじき死ぬ。体を動かせば動かすほど、崩れ落ちそうになるのを必死に抑え込んでいるようで、ますます動きが悪くなっていくことを実感している。実感に囚われるな!動け!死ぬなら戦え!生きたいのなら、
「戦え!!!」
これで何本目になる?今度はもうやばいかもしれない。腹に、チュカカブラの舌がまたも突き刺さった。今回のは効いた。こいつも道連れだ。と思ったが、あれ?腕が、力が・・・。背中にも痛みが走った。まさか・・後ろからも?もうだめだ。もう死ぬ。ほら、目の前に・・・迎えが来たようだ。このまま、俺たちの未来をこいつらに奪われるのが悔しいが、俺はもうこの戦いから降りざるをえないようだ。それにしても、今の天使ってのは、赤い翼をしているんだな。おっと、今というかこの時代か。しっかし、本当に変わっている天使だ。・・・もう俺は死んだのか?まだ生きてる?しつこいな。
「って、なんだ、あかきか?何してるんだ、こんなところで?」
キッピーがうわ言のように呟く。あかきの刀が、先に、キッピーの腹を突き刺しているチュカカブラの頭を跳ね飛ばし、そのまま振り下ろす形で背中にいるチュカカブラの首も切り落とした。瞬く間の出来事。剣光に遅れて、赤い炎が火線を引いた。あかきは素早く祈神化し、キッピーの傷を治す。
「危ないところだったな、キッピー」
「ああ、シャレになんねーほどにな。てか、おそ!!」
キッピーの勝手にあかきは思わず笑ってしまった。傷ももう平気のようだ。
「勝手にどんどん行っちまうからだろ。もう追いついたから、今から一緒に戦おうぜ」
キッピーにニッと笑うあかき。キッピーもニヤッとする。キッピーは、いや、あかきにも同じ感覚が芽生え始めている。この2人が揃った時のこの無敵感はなんなんだ?互いが互いを守っている。ただそれだけで、違う。この暗闇の中で、まぶしい光が2人を中心に広がっていくようだ。チュカカブラたちもそれは分かってしまったようで、ざわざわし始めている。あかきが不意に叫んだ。
「おい、ノミども!さっさと終わらせようぜ!まとめてかかってきな!こっちはたったの2人だぜ」
あかきが言った言葉、伝わるはずもないが、雰囲気は伝わった。キッピーもチュカカブラも覚悟を決め始めたようだ。あかきだけが、緊張感もなく笑っていた。そういえば、キッピーの歯がちゃんと生えてきたのに気づき、改めてキッピーは祈神の力に感服した。でも、飲み込んだ歯はどうなったのかが気になった。
「戦いに集中しろよ」とぼそっと言うと、あかきが「なんか言った?」と尋ねるも「なんでもない」と答えた。本当にどうでもいい話だ。
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