キジンとデス・イーターの章7
相変わらずのシュール
少し前に、デスたちは、このチュカカブラを地上に落しては、こいつらがどうするのか見て観察していた。それもただ単なる好奇心から。自分たちが作った生き物がどのような行動をとるのか。こと、昆虫のような小さな生き物が大きくなったとき、どのようにして生きようとするのか?デスたちはほかの生物の生というものが知りたかったのだ。なんせ、自分たちはほかの生き物を殺してまで、ほかの星を侵略してまで生き延びようとしているのだ。それが正しい判断なのか?ただの生きるものとしてのエゴなのか?答えが知りたかった。生き物は生きるためにほかの生き物を殺す。それは食すことも侵略することも同じことなのか。デスたちは知りたかった。結果、まだわからないが。
チュカカブラは、地上に降りて人間の家畜などを食い散らかした。やはり、生きるということはそれでいいものか?別の生き物に代えられても、やることは同じ。生きることだった。遺伝子操作で生まれた生物の寿命は短いが、このチュカカブラはものすごかった。4日ほどしか生きられないのに、その間に増殖してしまったのだ。これにはデスたちも驚いた。さらに、デスの仲間も次々に食われ、この宇宙船にいたデスの大半が死んだ。
このままでは全滅しかねないと思っていた矢先、一人(?)のデスが立ち上がった。船内のあちこちに散らばりかけたチュカカブラを一部屋に集めたのだ。そう、今あかきとキッピーが入った部屋だ。当然、その集めたデスは食われて死んだ。言う必要もないと思うが、この部屋に集められたチュカカブラは死にはしなかった。本能的に共食いをしながら、生き抜いていた。今、あかきとキッピーが対峙しているのだから。
デスたちも、これには考えさせられる。生きるということは、はたして共食いをしてまででもすることなのか?と。なので、デスたちはあえて、繁殖し、生き延びたチュカカブラを殺さなかった。一か所に集まったチュカカブラを殺すのは簡単だ。だが、あえて、生かしておくことにした。この生物はただひたすらに、共食いと繁殖を繰り返していくていくだけなのか。それとももしくは、進化して別の生き方を見つけるのか。あるいは、生きること自体をあきらめてしまうのか?それを見たかった。
そんな中で、今、まさにその過程を観察していたのに思わぬ邪魔が入ってしまった。いつの間にかこの船に潜入していた人間2人。この2人が、勘がいいのかほかの部屋には見向きもしなかったのに、よりによってこの部屋に入ってしまったのだ。もっとも、始末する手間が省けたし、人間がこのチュカカブラ相手にどう戦うのかも見物だ。しかし、さっき書いてあった『俺の名はしんご』とは何らかの関係があるのか?あそこに1人でいた人間がしんごだろう(さっきどうやってかこの船から逃げたやつだったが)。しんごというやつもかなり不思議なやつだった。それにしても、何故あの場で自己紹介を敢えてしたのだろうか?なにか意味があったのか?よくわからない。
キッピーが不意に「話長いんだよ」と吐き捨てるようにつぶやいた。
「え?何か言った?」とあかきが不思議そうに聞き返す。なんせ、誰もしゃべってはいなかったはずなのだから
「なんでもない。それにしても数が多いな」
キッピーとあかきは壁際に追い詰められていた。数えるのも面倒なほどのチュカカブラが押し寄せてくる。じわじわと、ゆっくりと。
「なんか、こいつら油断してるよな」
キッピーがチュカカブラを視界に捕らえながら、あかきに問いかける。あかきも視線はチュカカブラを捕らえながらも「そうね」と答え、焦りながらも笑み浮かべる。
「じゃあ、俺から行こうかな」とキッピーが言うので、あかきは「どうぞ」と答える。「やっぱ、あかきから行くか?」と聞くも「どうぞ!」と強めに返されてしまった。キッピーが言い出したくせに「わかったよ、わかったよ」といかにもめんどくさそうに答えた。
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