表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/61

キジンとデス・イーターの章6

名前、間違えではない

2人は同じ方向を見ている。だが、思いはこうまでも違う。そこが怖い。なんて、今の2人には気が付くはずもないが。今回は前のように別に急いではいなかったから、あかきとキッピーは特別焦らずに進んだ。下手をして癇に障ったデスどもに、いきなり地上を攻撃でもされれば元も子もない。だから、急がない分、操縦室までかなり遠く感じた。

「なあキッピー。このまま何事もなく行けると思う?」

あかきが何の気なしに聞いてみた。前は怒りにまかせて突っ切ったが、今回は別にばれてない。よな?今のところウォーニングの警報音もない。

「さあな。とにかく進めばわかることだろ。一応、警戒はしている」

キッピーは嗅覚を広げた。今、デスを見つけたら問答無用で殺し、食すだろう。そのために、普段以上に5感、6感が研ぎ澄まされていく。でも、標的はあくまで操縦室にいるデスだ。そこさえ押さえれば、攻撃される心配はなくなる。はずだから。

しかし、あまりにも静かだ。なんなんだこの船は?段々と進むにつれ、能天気に見えるあかきに引き替え、キッピーの顔が険しくなっていく。5感、6感をこれほどまでに研ぎ澄ましているのに、そのアンテナに引っかかるものがないなんて。

だが、それはこの船の罠だった。正確に言うと警備に使われている罠ということではなく、偶然的な罠なのだ。つまりどういうことなのかは、まあこれからわかるだろう。

「・・・何かいるぞ」

「え?」

2人はある部屋の前で止まった。キッピーが止めたのだ。キッピーのアンテナに、やっと何かが引かかった。それは今までに嗅いだことのないにおいだった。まるで昆虫のような・・・それだけじゃない。お世辞にも、うまそうなにおいとは言えない。けど、気になる。部屋の扉は締まっていた。だけど、押せば簡単に開きそうな、普通に見えるただの扉。あかきはどうするんだ?とキッピーを見ている。こんなところで時間を潰してられない。だが、キッピーは動かない。

「扉を開けるよ」

あかきが扉をすーと開けた。キッピーが止めることもできないほどあっけなく。キッピーはあかきを睨んだが、あかきは素知らぬ顔をしている。そして、警戒しているキッピーを余所にさっさと部屋の中に入って行ってしまった。

「ちょ・・・ちょっと待てよ、あかき」

キッピーも慌てて部屋の中に入る。いくら、あかきにキジン化の能力があろうが、心配なのだ。なんせ、ここからしたにおいは、デスのそれとは明らかに違っていたからだ。キッピーが人の気も知らないでとあかきに思いながらも、あかきもただ止まっているキッピーに対して、人の気も知らないでと思っていたからお互い様だ。

部屋は、かなり広く、ただ、広かった。初め、「何もないのか?」とあかきがぽろっと漏らしてしまうほどの殺風景な部屋だった。キッピーは、それでも気を抜かずに警戒を解いていない。あかきは、もうすっかりリラックスしてしまっている。においは間違いなくここから出ている。しかし、あたりを見ても何もいない。でもいるのは間違いない。不意にがさがさ・・・と何かが動く音がした。周りを見ても何もいない。地上にいないのならば・・・

「上だ!!!あかき!!!!」

キッピーの叫びで、2人同時に天井を見た。天井もやたら高かったが、そこには無数の黒い塊が動いているのが見えた。よく見るとそれは緑色で、人(子供)のような大きさをしていて、よく見えなくても分かるほど気持ちの悪い外見をしている。

「ノミ?」

あかきが、気づいた。そうだ。こいつは、こいつらはノミだ。それもやたらにデカいビックノミだ!それも無数にいるノミ軍団だ。正直に言おう。気持ちが悪い。正直に言おう。関わり合いになりたくない。あかきとキッピーは同時に互いを見合わせた。やることは一つ。あかきは静かにうなずく。キッピーも同時に、同速で頷いた。何も言葉はいらない。

「(逃げるか?)」

「(当然でしょう)」

「(じゃあ行きますか?)」

「(オッケー)」

抜き足差し足でこの部屋を出ようとするも、やはり、そんなにうまくはいかないらしい。分かってはいたが、いざそうなると面倒くさいな、さすがに。キッピーはため息をつき、あかきはさっきまでとは別人のように気を引き締め集中し始めた。背後からぼと、ぼとぼとと何かが(完璧ノミ野郎だが)落ちてくる音がしはじめる。ゆっくり、振り返ってみた。案の定、音の正体はノミ野郎だ。奴らの名前はチュカカブラ。そう、あの有名な奴だ。

チュカカブラは、デスどもの実験でノミの遺伝子を操作して巨大化させたものだ。デスたちがノミを巨大化させたことに特別な意味はない。暇なデスどもの単なる暇つぶしだった。だが、この生き物たちの意外な凶暴性に、誰もこの部屋に近づかなくなっていたのだ。この部屋に鍵がかかっていなかったのは、単にチュカカブラに扉を開けることができなかったためであり、この部屋がデスたちの間では立ち入り禁止になっていたことは言うまでもない。


読んでくれてありがとう。次もよろしく!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ