あかきキジンの章3
しく!
つまり、ここは宇宙船の中。思ったほど機械ぽくはなく、どちらかというと家っぽかった。ただ、この家に住む者たちは血も涙もない宇宙人。キッピーはそいつらを殺しに来たという。部屋を出て、指揮官のいる部屋に向かう。宇宙船の内部は指揮官のいる操縦室に続く一本の通路と、その通路を挟んで部屋がいくつか並んでいた。広い。
やつらは未来で『デス・死神』と呼ばれていた。向かう途中でデスの雑魚兵を10匹以上倒した。キッピーが渡してくれたシールド(それも奴らから奪い取ったらしいが)は意外と効果を発揮してくれた。宇宙人の持つ銃のような武器からことごとく防いでくれた。もっとも、シールドなんてなくったって2人ともそんなものには当たらない。躱さなくていいから楽だった、ぐらいのものだ。キッピーという男は、まだ22の若者のようだが(それでも俺よりは年上だが)、未来でこの宇宙人・デスと対抗している人間らしく、尊敬と恐怖の念からこう呼ばれているらしい。『デス・イーター』と。キッピーも強いが、俺ももともと趣味でキックボクシングをしていて、高校の時に全国大会にも行けたが行かずにやめたほどの実績がある。だから体力には自信があった。でもまあ趣味なので。
そうこうしているうちに最後の扉の真ん前に来ていた。その奥に指揮官がいる。キッピーがきた未来は今から30年後。奴らは何の前触れもなく現れ、人類を支配した。しかし、人類も抵抗はしている。そこで開発されたのがタイムスリップ装置(そのほとんどが宇宙人の技術のパクリらしい)。そもそも未来を支配し、それに飽き足らず、過去の世界も支配しようとし始めたデスたちがタイムマシーンを作っていたのだ。そんな最悪なやつらを、キッピーが追ってきたというわけだ。
沸々と、怒りが湧いてきた。いや、そんなものは限界を超えるほどに出し尽くしたと思っていたが、出尽くすわけがなかった。くそ宇宙人の道楽のせいで、こんな奴らのせいで、俺らの世界が崩れてしまうなんて、許せるはずなんてなかった。仮に許そうと思う心があったとしたのなら、自分自身にも怒りを覚えてしまう。それは違うだろ。怒りをぶつけるべき敵は目の前にいる。こぶしを硬く、固く、堅く握りしめた。そして扉をその拳で叩き壊した。自分でも信じられないほどの力が出たが、どうでもいいことだった。
男が・・・立っていた。正確には男かどうかも、ましてや人であるかどうかすらわからないが、形は人に似ていた。その隣に、ひと際でかい宇宙人がそびえ立っている。こいつが指揮官だということは一目でわかった。が、隣の奴はなんだ?キッピーの顔を覗いたが、無表情にも近く読み取れなかった。そのキッピーが口を開く。
「どっちから行く?」
俺は叫んだ。「指揮官に決まってる!!!!」
叫んだと同時に、3人が動いた。一人はうっすらと笑みをこぼしながら、そのあと二人が別々の壁に同時に叩き付けられた。謎の男はまるで動いていないように、しかし、目にも止まらないような高速で、動こうとした瞬間に二人を同時に壁に叩き付けたのだ。シールドがなければ今ので死んでいた。キッピーに目をやると、その表情から驚愕の色が隠せずに出てしまっていた。キッピーですら知らないこいつ。まるで人間のような雰囲気と佇まいを持ちつつも、存在はやはり宇宙人そのもの。「まじで何者なんだ?」こう言ったのは信じられぬことにキッピーだった。そして続けた。
「このままじゃ・・・勝てない」
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